能登半島地震で住宅が傾いた方へ
新潟での5棟目の現場です。(元旦の能登半島地震以降では3棟目)
善久から徒歩10分程度の「山田」で同じく土台揚げ沈下修正工事をやっています。
今回もお住まいされながらの工事ですので、ガスや水道をフレキ管(伸び縮み出来る管)にしていただいてます。
画像の真ん中の鉄板が斜めになってないか?
と気がつかれた方は「土台揚げ沈下修正工事検定2級」に合格できます(笑)
なぜ?斜めに鉄板を通しているか?というと下の写真の通り。勝手口のステップがあるため枕木が思うよう組めません。
家をきれいに揚げるということは、正しく反力を採る。ということです。
そんなわけで、鉄板を斜めすることで、敷いた枕木の真ん中にジャッキをセットできています。
ちなみに、本当はここにはジャーナルジャッキを使いたかったのですが、排水管が勝手口寄りに通っていた為、これを割らないようにするために、深堀りするのを止めて3寸角の枕木を選んでいます。
今回は玄関部分も沈下してましたので揚げるためにタイルを切り離ししなくてはなりません。
タイルが土台を引っ張っているわけです。
で、きれいに斫り出しました。
ガレージ側はこんな感じです。
柱勝ち。になっている箇所もありましたので・・・
そのまま、土台を揚げるとホゾが歌う(音を立てて壊れる)危険がありますので、細工をして補強して揚げました。
※
そのまま揚げる業者さんもいるでしょうが、家は揚がったものの人間で云えば関節が弱くなるような施工はしたくありません。
正直、古民家を直すように柱を掴んで添え柱を取り付けてしまえば簡単ですが、すると壁や今回の場合だと扉のフレームも取り外さないといけません。
それゆえ、内壁を剝がして、ホゾを補強する為の「間柱」を挿入させて頂きました!
よく浴室はどうなるのか?をご質問いただきますが、土台揚げ沈下修正の場合は「新築時からユニットバスである場合は(ほぼ)そのまま揚げること出来ます」
在来浴室(タイル張りのお風呂)もタイルに切れ目を入れさせていただければ揚がります。
しかし、「在来浴室→ユニットバス」に途中でリフォーム変更されているものは一旦、解体していただいて再設置が必要です。
↑解体したユニットバスをガレージの中に養生して入れて頂きました。
通常はリビング等に仮置きすることが多いです。
浴室も、配管を通す為に土台に穴を開けていた+ユニットバスにした際に出窓の位置をコンパネで覆ったのみだったものを、この機会に大工さんに入っていただいて構造補強します。
アンカーボルトの再緊結は土台揚げ沈下修正工事に於いて、ものすごく重要です。
こちらでは、元請けの「にいつ住宅研究所」の大平(おおだいら)さんに確認を取りながら、ガス管に近い箇所では火花の出る溶接は危険ですから、壁を解体して「伸ばしナット」で繋がせて頂きました!
壁の修復費用はかかりますが、こちらの方が引き抜きに対しての効力も強いですから、「より新築時に近い」施工になります。
住みながらの工事ですので床も揺れないよう大引きにもジャッキをセットしてます。
いよいよジャッキアップです!
ps
4月10日(水曜)は「住学」主宰で同じ液状化被害をうけた千葉県浦安市松崎秀樹前市長に新潟に来ていただいての浦安ではどう対応したか?をお話いただくセミナーが開催されました。
当日のセミナーは収録され「住学」チャンネルでご視聴いただけます。
↑記念撮影です。
なぜか?前列センター(汗)。
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お気軽にご相談ください。hikiyaokamoto@gmail.com
5月末には、東京に戻るタイミングありますので関東近郊でもよろしくお願いいたします。
新潟市西区善久の現場完工しました!
今回を含める全4回のブログは、曳家岡本の土台揚げ施工内容を細かく解説しました。地震が起きてからの新潟県内での土台揚げ沈下修正工事に対する不当な低評価を悔しく思って、丁寧に施工すれば、床や外壁を解体して施工中に引っ越ししないといけない。などということは無いし。他工法より安価であること。築35年以上の基礎コンクリート強度が現代の規準からは劣っている場合に基礎ごと揚げることで却って基礎を傷めることもありますから、選択肢として土台揚げもあるよ。と伝えたくてクドかったかと思いますが。細かく解説させていただきました。
今回は床下の湿気が高く、土台のコンディションがベストではありませんでしたので、それらを補うための細工をさせて頂きました。
もちろん施工中は床下も通風が良くなりますので少しは乾いてくれたかと思います。
ジャッキアップが終わりましたら、次はアンカーボルトや基礎梁の鉄筋を伸ばすための溶接です。
いつも書きますが、アンカーボルトは根太の間にすき間があったり、もしくは壁を開口していただければ「伸ばしナット」を取り付けて溶接することなく接続できます。
↑「伸ばしナット」施工例です。
これが出来ない(もしくはしない選択)をされた場合は「溶接」となります。
堅田職長の熟練の技が光まくります!
アンカーボルトの溶接は、溶接中にボルトを通じて上がる熱のせいで壁の中の断熱材やホコリに発火させて火事を起こさせないための下処理が重要です。
燃えやすいものが周辺に無い、身体が自由に動かせる環境での作業とはまた違います。
そして、地震時に受ける衝撃を考慮すると出来る限り強固な溶接が必要となります。
そのため見た目に美しいウィービングを造るより敢えて「電圧を上げて」溶接しています。
この水蒸気があがっているのは、溶接をしては水を掛けて発火を防いでいるためです。
宏くんが、床下で怒鳴られながら鉄筋を抑えたり、水をかけています。
溶接は毎日15時前後には止めるようにしています。
現場に残って壁の中から煙が出ないか?等を確認するための時間です。
溶接が終わりましたら、次は配筋です。
今回は、縦筋の被りが100mmも下でしたので、(通常は40mm前後)これを斫って縦筋を溶接するのは却って基礎梁の強度を落すと判断して、アンカーボルトや柱下にセットした鋼製束を利用して横筋のみを取り付けるようしました。
沈下量が大きな部分は、柱直下には鋼製束を設置して、左右にハードウッド(イタウバ)をカットして芯材として入れます。
それでは施工中の地震に対する対処が出来てませんゆえ、長いハードウッドを使ってブリッジします。
時々、基礎天端の120mm幅より縦方向に長い芯材を使って据え付けている画像を見ます。
それは、地震が起きた時に横揺れした場合の転倒のアスペクト比を考えているの?と心配になります。
また、基礎天端幅と同じ大きさの120mm角の檜を使っている方もいます。
それも、モルタルの一体化を阻んでいて、基礎梁に欠損を作っている施工ですから。
配筋終わりましたら、型枠を組んで、モルタルの練り込みです。
沈下量が大きい部分は何度かの手間を経て完成となります。
ps
最近は「ジ・オファー ゴッドファーザーに賭けた男」を観てます。ゲオ寺尾店に行ってます。
「ゴッドファーザー」の制作舞台裏ものです。
フランシス・フォード・コッポラ役の方が本物に比べるとやや貫禄不足なんですが。そこは主人公のプロデューサーをカッコよく見せるためのキャスティングなのかなーと思いつつ。
「ある愛の詩」出演前後のアリ・マックグローや、「明日に向かって撃て」撮影中のロバート・レッドフォード役のみなさんもものすごく良いです。
でも、最高なのはアル・パチーノ役の方。顔が似ているとかでなくて当時の繊細なパチーノの情感を再現してて、プレ老人としてはニヤニヤするのみです。
お気軽にお問い合わせください。
hikiyaokamoto@gmail.com
新潟市西区でも特別、液状化被害が大きかったと言われる善久での工事が始まりました。
我々はなんでも言って来てくだされば、どんなお家でも土台揚げしているわけではありません。
安価な土台揚げ沈下修正工事を依頼したい。というお話を頂きます。
しかし自分はどんなに仕事無い時でも建てて20年以内ならアンダーピニング工法も推奨します。
そして築35年以上であれば遠慮なく「土台揚げ」の受注をさせていただいます。
現在の基準からすると配筋およびコンクリートの強度が劣る為、基礎ごとのジャッキアップをすると割れてしまう可能性が高い。からです。
また、善久地区を歩いていると、既に基礎が割れている。もしくは壁の中の柱が座屈しているだろうお家が目に入ります。
こうした場合は「基礎ごと」揚げる工法は向いていません。
今回は、最大沈下量245mmと、傾きが大きいですから。腕の見せどころです!
傾きが大きいと荷重が集まってますから、揚がり始めは相当重いと予想されます。
それゆえジャッキを1200mm間隔でセットしています(通常だと、1500~1800mm間隔です)
お隣のお家と接近している部分はフェンスを撤去していただいて室外機を一時的に基礎梁から離させて頂きました。
床下への出入りも、サッシのすぐ近くに新たな点検口を造っていただいて、汚す心配なく作業できる環境を作って頂きました。
今回の元請けさんは(株)ミライエさんです。
ミライエさんでは簡単なものは自社施工でリフォーム工事も出来るように。との考えから、今回と次の現場では社員さんを1名常駐させて一緒に作業していただいて「技術を盗む」計画です。
色々な考えがありますが、自分は「曳家岡本のマイクロソフト作戦」として、技術はオープンにお教えさせて頂いています。
だって、ほら。どうしても規模の大きな建築物になったら専門職に依頼せざる得ないし。
どのみち、自分たちで工夫して変なことやるくらいなら学んでいただいた方が世の中の為です。
さてさて、今回も「負けたくない」プレ老人として。仮想ライバルを「新潟シルバー人材センター」から派遣されてきた老人としている自分としては。
スロープのある部分を斫ることなく、きれいに斜め部分を水平にするために、余分に持参した柱を掴むための金具、通称「2つ穴」で剛性を担保しつつ。
立ち上がりの高さが足らない分は背の低いマサダ10トンジャッキを使ってセットしました。
床下から出てきた堅田職長に「どんなもんだい?」と見せつけてやりましたが・・
「いつも通りじゃないですか。」と軽く言われました。
しかーし。やがて「いつも通り」が出来なくなるだろうプレ老人は大いに威張りたいわけですが。
なかなかみなさん。この微妙な工具の使い分けを目ざとく見つけてくれるわけもなく。
悔しいので、ここに書かせてもらうわけです。
ところで「事件は現場で起きている」わけですが・・・
普通にジャッキをセットしてゆくのですが・「垂れてきて」上手く揚がらないところが出てきます。
色々な問題からこうしたことが起きるのですが・・・
今回は、↑のジャッキの右側の
「土台に柱が乗っていなくて柱勝ちになっている。しかもホゾが無くて金物プレートで繋いでいるだけ」です。
うーん。これでは「土台揚げ」出来ませんので、本来であれば壁を解体して柱を掴んで持ち揚げたいところです。
しかし、そうもゆかないですから、まずは一旦は確実に水平に戻すために、もう1ポイント増やします。
水切りの不自然な垂れを直して、サッシの建付を見ました。
本来は建付けなどは据え付けてから見ていただきたいのですが、まあまあのお施主さんは施工過程であっても「ここの建付けが悪くなった」「クロスが切れた」と心配されます。
そうしたご心配を掛けさせないで済むようにも手間をかけます。
ps
3月21日(木)朝、まだまだ新潟の冬は終わりません。
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先日の休みは宿舎から14kmほどのところにある「岩室温泉」(だいろの湯)に行ってました。
道中には酒蔵が5軒ほどあり、酒どころ新潟なんだなーと思いつつ。
酒蔵があることもあって高知県の佐川町に似た風景だなーなどと黄昏れておりました。
で、温泉のあとはヨーグルト牛乳ですが・・今回は「カニ・コーラ」。カニ風味と書かれていたんで心配してましたが、変な味ではなく普通に美味しかったです。
新潟市中央区での「土台揚げ沈下修正工事」完工いたしました!
こちらの現場は最大沈下量75mmと比較的症状が浅かったことからも液状化によるN値の戻りが早い。
と判断して早々の施工をさせて頂きました。
一見なんの変哲も無い画像ですが、ジャッキをセットするために外壁を解体したり、
逆に犬走りを割って枕木を敷いた跡がありません!
こうした自己満足(嘘)の積み重ねが精度を上げます。
床下のスタイロが欠落しているのは「伸ばしナット」を取り付けるためです。
ご許可いただければ可能な限りより良いと思える選択をしてゆきます。
前回ブログの独立柱の修復の続きです。
含水率を上げないように防水テープを底面に貼りました。
↑銀色に見える部分がそうです。
モルタル補修をする前には、ハイフレックスを塗布してます。
ここから後は、オーガニックスタジオ新潟さんのご手配で板金を巻くそうです。
もちろん、基礎修復でも塗布してます。
そしてコンパネで型枠を組んで基礎天端を丁寧に詰めてゆきます。
画面右下に撮影者(岡本)の足首があります(笑)
雪の吹雪く中での床下の冷たさは格別です。
モルタル塗りは、宏くんの担当。
柔らかくなりすぎると、「垂れます」から絶妙な硬さを追求します。
接着剤を入れすぎると、施工は楽ですが。強度が落ちるんで厳しく監理します。
この基礎修復をおざなりにする業者や、監理しきれていない建築士、工務店さんがいます。
何度も書きますが、
「建物を水平にするのはさほど難しくありません。固定してからが大切です」
詰めるのが面倒だからと、型枠を噴かせて、じゃぶじゃぶのモルタルを土台の上場より2cmほど高い位置から流し込む業者がいます。
よく考えてください。水分を吸い上げた土台は腐りますよ!
そして沈下した建物に新たな荷重(増し打ちしたモルタルもしくはコンクリート)を付け加えると再沈下を促進します。
ざっくりとは、「中目」川砂を使います。
しかーし。揚り幅が僅かな部分や補修には「見た目」を考えて「細目」川砂を使います。
実際には左官さんが上塗りするんで関係ないんですけど、まあお渡しするまでの間、きれいな方が気持ち良いですから(笑)
時々「良い業者を紹介してください」と言われることがあります。
「値段も味のうち」という言葉がありますが、施主の年齢、家族構成などでいくらくらいまで費用を掛けるべきか?は変ってきます。
職人として「こうすることが正解」と考えることはありますが。
あくまで参考意見であって最終判断はお施主さんにしていただかなくてはなりません。
自分は自分を選んでくださったお施主さんに誠意を持って施工させていただくのみです。
↑この画像を見ていただくと、曳家岡本の誠意が判るかな???
先週土曜日には山形県の曳家「我妻組」我妻敬太社長が現場に立ち寄って下さいました。
我妻さんと、鋼管杭のジョイント方法についてや、無駄に費用を掛けさせない工事をご提案させて頂くには?など話し合いました。
沈下修正工事は誰しも予定していなかった不幸な工事です。それは手術のようなものです。
皆さまが勉強熱心で、誠意ある医者に出逢えますように。
3月10日(日曜)には、新潟県建築士会主宰のセミナーにも登壇させて頂きました。
※画面に写っているのは酒井さんです。
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西区善久の現場も始まりました!
新潟および北陸の皆さまよろしくお願いいたします。
ps
弊社が躯体の修復を担当させて頂いた、旧 桑浜小学校(現モリウミアス)が長澤まさみ、横浜流星、リリーフランキー、森菜々出演の映画のロケに使用されたそうです。
【Netflix】映画『パレード』キャスト・あらすじ |長澤まさみ主演、横浜流星ら出演 | イエモネ (iemone.jp)
投稿遅れてましたが、曳家岡本。新潟市中央区で土台揚げ沈下修正工事をさせていただいております。
お家が大きいですし、自分らは心配症なんで一般的な土台揚げをされる方の約3倍程度の工具を搬入をしております。
熟練の技(笑)で、ジャッキをセットしてゆきます。
一般の方向けに説明させていただくと、「上手い医者は必要最低限しか切らない」に近い感じです。
出来る限りアンカーボルトを切りたくありませんから、座彫りして「伸ばしナット」を取り付けてゆきます。
最近は、ここの手間にすごく時間をかけるようなりました。
快調に「伸ばしナット」を取り付けていたんですが・・・いくつかどうしても入らないナットがある!どういうこと?
試しにインチタイプを取り付けてみると・・
入りました!!
どうやら大工さん。ここの現場で在庫処分したんだろうなー。M12タイプとインチタイプが混在してました。
もちろん強度的には何ら問題は無いですし、こんなこと無ければ誰にも知られずひっそりと家の生涯は終わったんでしょう。
宏くん。今日も玄関靴箱したに蛇人間です。
ご苦労様です。
さーてさてさて。玄関部分の独立柱のジャッキアップです。
こういう細工はまだまだ若いもんには任せられん!(笑)と親方自らの施工です。
実はね、15年以上前は四国ローカルの曳家でしたから、こうした柱にボルト穴を開けずに摩擦力で掴んで持ち揚げる金具を「造りたくても費用が無くていつも渋々、柱に穴を開けてました。
その頃のコンプレックスから、金具で掴むのがいまだに嬉しくて、なるだけ自分でやります(涙)
少し持ち揚がりました。
元請けさんであるオーガニックスタジオ新潟の小林さんが「掴み金具」を見て
「去年、岡本さんたちに言われた意味がよく判りました。これは良いですね。」と言ってくださいました。
良い細工を知っていただくことは我々の喜びです。
現場途中で自分は富山県建築士会さん主宰の「液状化被害に関わる家屋復旧対策セミナー」で講師をさせて頂きました。
前半は地盤の専門家であるグランダートユニオン代表 酒井盛幸さんによる液状化に対する解説があって、その後、自分が幾つかの沈下修正工法(主に自分の専門である土台揚げ沈下修正)と抜けたホゾの引き締め方や業者を選ぶ際のヒントなどをお話させて頂きました。
翌日は石川県羽咋郡志賀町に現地調査に伺わせて頂きました。
石川県に入ると、ニュースで見る光景が拡がっていました。
ひっきりなしにサイレンを鳴らしながら走ってゆく救急車。
また全国の警察が応援に来ているらしく他県ナンバーのパトカー。
以前、出身地である高知県行政の方に「岡本のやっていることは民業なんだから、行政が支援する必要はない」と言われていたそうですが、北陸各県の建築士会や被災住宅にお住まいの方の為に、自分の出来ることは本当に僅かです。
今は昨年からのご縁で新潟・住学に参加されている建築士さんからのご依頼中心にお仕事させて頂いてますが。
数やれない自分たちとしてはどうするのが一番 良いのか?悩んでしまいます。
ただ今、新潟県中央区で土台揚げ沈下修正工事を行っております。
昨年に引き続きお声かけ頂きました「オーガニックスタジオ新潟」様には深く感謝いたします。
さて、石川県からの社寺、伝統構法の建築物の修復のご相談が増えてきましたので、石場建て建築物の修復に関する基本情報をお伝えしておきます。
まず石場建て建築物の場合、土台がありませんので。
ジャッキをセットするためには壁を落して添え柱を取り付けなくてはなりません。
また直下率が悪いところは、下から枕木を組み上げて、サポートしなくてはなりません。
地震で揺れて変形したもを「水平を直した後に、垂直を直さなくてなりません」
家起こしは建築物を起こす過程で「倒す」リスクとの闘いです。
たくさんの枕木を使用してバックアップします。
古い農家の家起こしをしている場面です。
↑家起こしをしましたら、元に戻らないように、仮筋交を入れてゆきます。
地震により歪んで変形した建物は癖が付いてしまっていますから、
「柔構造を剛構造に換えなくては正常な形を維持できなくなっています」
なので新たに嵩揚げをしておいて基礎を造って据え付け直さなくてはなりません。
据え付けが完了すると、耐力壁を挿入してゆきます。
地震の揺れで仕口が傷んでいるからです。人間で云えば関節が弱くなっているとイメージしてください。
ざくっと解説させて頂きましたが、石場建て建築物の修復には相当の費用がかかります。
例でいうと、例えば弊社が沈下修正工事と家起こし、嵩揚げを40坪程度の建物で行ったとすると、
1000万円~1400万円程度かかります。これに千葉県いすみ市から工具類の輸送費と宿泊費など経費がかかります。
さらには、木工事(工務店に依頼してください)に2000万円~3000万円かかるだろうと思います。
すると居住スペースとしてだけ必要としているなら近隣で被災されていない中古住宅を買われるのが安価になります。
もちろんローコスト住宅もありです。
社寺、古民家を修復したいと考える方は、それはアンティークやビンテージものを直すのと同じであること。をよくよく考えて検討するべきです。
昨年11月に「曳家岡本口伝 構造から直す本気の住宅再生」(創樹社)という本を出版しています。
こちらを読んでいただくとまずまず細かな細工についてや、見積書の内訳を記載しております。
amazonや楽天ブックスなどで販売されていますのでよろしければ読んでください。
いよいよ今夜より「曳家岡本」新潟入りします。
(自分は21日、22日と大阪で沈下修正工事に関するセミナーをさせて頂いてからの合流です)
雪降る中、上野近くでの現場の撤退を堅田さんと宏くんに御願いして、出身地の高知県で建築士会有志の熱意で開催していただいた「曳家岡本口伝 構造から直す本気の住宅再生」出版記念セミナーと懇親会は高知県を代表する料亭「得月楼」で、にぎにぎしく実施して頂きました。
一泊だけですが、参加するために来てもらった堅田さんが、「親方の嬉しそうな顔を見てウルッと来てしまいました」と告白してくれるほど。
自分は長く地元では評価いただけないままでしたから、この日は本当に感無量でした。
東京での著名な建築関係者に集まっていただけた懇親会とは、また違う温かい気持ちになれた一夜でした。
東京にとんぼ帰りした堅田さんは、翌日から20トン越の資材の撤退作業です。
自分は高知県に残って、4日間だけゆっくりさせてもらうつもりでしたが。
高知入りする前日まで新潟でのセミナー後に廻らせていただいた、現地調査11棟の見積書を書くのに3日ほど使ってしまいました。
なにしろ、皆さん早く施工金額を知りたいでしょうから、これは東京に戻ってからではないな。と判断して書きました。
高知に置いてある予備機のPCを久しぶりに繋いだら、windows7からヴァージョンアップしていないままだったせいで、変な警告画面が出ます。
近くのPCショップに修理に持参しましたが、上手くゆかず。結局、手書きの見積りを書いて写メで送らせていただくというご迷惑を掛けました。
遺された時間の中でご事情で出版記念懇親会にはご参加いただけなかった先輩や友人にご挨拶に廻らせていただきました。
堅田さん、宏くんは千葉県いすみ市の倉庫で片づけ+メンテナンスと、新潟行きの荷造りです。
昨日、2月19日の「読売新聞」の記事です。
弊社にも、石川県から1棟お寺の修復相談来ていましたが、やはり「今は檀家さんたちもたいへんだから(寄付を募れない)」と話が頓挫しています。
一般的な40坪前後のお寺の沈下修正や、家起こしをする為には50トン以上の枕木や鋼材が必要になります。
これらを保有していて対応できる業者数は限られています。
はっきり云って、一般住宅の傾きを直させてもらっている方が身体への負担も少なく、会社としてもそちらを数こなす方が正解です。
しかし、後2年で引退を考えている自分の気持ちを知ってか。
堅田職長が「社寺の相談来たら優先してください。親方の想い出になりますよ」と言ってくれます。
弊社は小さな会社です。
ご要望に応えるために、5月からは1名人員を増やす計画があります。
それ以上は自分たちで管理できる施工品質が維持できませんので増やしません。
小さな会社の小さな矜持です(笑)
少しづつ角度を換えながら新しい基礎上まで曳家してまいりました。
まだ、この高さだと「蛇人間」宏くんもスイスイと床下を移動できます。
ガイドで土台と基礎の位置を照らし合わせて微調整してゆきます。
位置が決まりましたら、全ての柱に直接、ジャッキを掛けてH鋼を抜けるようにします。
いよいよ「上腰工法」への変換です。
上腰工法とは敷居より上で柱を掴んで持ち揚げる曳家の技術の一つです。
鋼材を貫通させるために柱廻りの壁を抜かなくてはなりませんが、その代わりに基礎は新築と同じものを造れます。
曳家をすると、どうしても鋼材を抜くための開口を基礎に造るのが多いですが。
基礎立ち上がりを「基礎梁」と考えるなら、梁にあちこち穴を開けて「後から埋め木するから良いだろう」というのは良い工事ではありません。
しかし「構造から直す本気の住宅再生」(創樹社)の巻末対談で伊礼智先生に告げてありますが。
我々が主導するとどうしても「耐震性」や「強度」のことばかり優先してしまいます。
やはり建築士さんがお施主さんの生活スタイルをきちんと聞き取りしてくださり、何を優先するか?選んでいただくことが重要です。
ここまで土台下にあったH鋼を敷居上に組みなおして行きます。
堅田さんと宏くんが「今日はここまで」と自分たちでノルマを決めて終わるまで帰らない。と強いハートで作業してくれます。
親方である自分は、疲れてくると右手首の力がすこぶる落ちてくるので、細工仕事を担当させてもらってます。
ジャッキダウンするために、枕木の中心に伸ばした状態のジャーナルジャッキをセットしてゆくんですが。
両側に仮受けした低床型ジャッキの真下(2枚目のジャーナルジャッキのギア右手)を見ていただくと不自然に枕木の間に、12cm程度の空間があることに気づかれると思います。
これは本来、ここに少し前までは枕木が通っていたことの証明です。
曳家は大工さんと違って「ばらしておいて組み直そう」が出来ない職業です。
どんな時でも、辛抱強く何度もジャッキを移動させながら、少しづつジャッキダウンを始められる状態に持ってゆきます。
上腰工法に変換しましたら、床下での木工事も楽に出来るようなります。
今回も200台近い大小取り交ぜたジャッキを惜しみなく使ってます。
もうすぐ据え付けです。
※帰り道 信号待ちにて。
能登半島地震の被災住宅からのお問い合わせが続いてます。
お問い合わせ頂きましたら、症状、築年数等を伺って理想の沈下修正工法をアドバイスさせてもらってます。
必ずしも弊社にご依頼ください。というわけではありません。
これは平時でも、仕事が薄い時でも変わらない姿勢です。
それでも、「地震保険に加入はしていたけど保険の審査で35万円しか降りませんでした。とてもではないですが、アンダーピニング工法を選ぶ余裕はありません。」と土台揚げ沈下修正工法を選んで、弊社にご相談くださる方もいます。
「曳家岡本」は1班体制の小さな会社です。
もし今、ご連絡いただいているお家とお寺1棟(新潟10棟、富山2棟、石川2棟)が全て決まればそれだけで1年が必要となります。
もちろん全てご依頼いただけるはずもないでしょうし。
「そんなに待てない」という方もいらっしゃると思います。
自分たちに出来るのは、ご依頼いただきました建物を1棟1棟を丁寧に誠実に直してゆくのみです。
どんなに疲れていても目の前に1本18kgの枕木が置かれると、まるで生前の記憶に従うようにレールを敷いてしまうのが曳家職人です。
「弘法筆を選ばず」と云いますが、「曳家岡本 工具選びまくり」です。
栃木県の曳家「五月女建設」五月女社長が、職人の小暮さんと陣中見舞いに立ち寄って下さいました。
「一つ一つの工具が一人で持てるようなっててこれは便利。自分らだとユニック入らないと搬入に苦労します」
「確かに、この工具が向いている現場ですよね」
お2人はその場で導入も検討するくらいです(笑)
弊社の堅田部長が「棲み分けでお願いします(笑)」とニコニコ返事します。
そして、(一社)建物沈下修正業者連合会 事務局の三島さんに、ウインチ自慢。
「うおーー!久々にでかいウインチ見ました!安定感がありますね」
もちろん基礎に当てずに底板まで掘っています。
滑車は4連です。1回廻すたびに半分に減りますので手元に来る重さはおよそ40kg程度です。
かなり移動しました><
まあまあ動きましたので、高基礎部分を越えるために全体をまた17cm揚げます。
自分は、枕木組ませたら、
昨年も全日本曳家枕木組選手権で昨年も「60代の部」で優勝したくらい上手いです。
堅田部長がそばを通りすぎながら「愉しんでますね(笑)」と云ってゆきます。
いやいやまだまだケンジさん(たまに手伝ってくれる堅田さんの友人)には負けられません!
細かな調整のために敷いた軍手や基礎梁を遺して左右に組んだ枕木の美しさを見てください!
今回は個人住宅ですので全体像をお見せ出来なくて残念ですが。背が高くまた、通し柱の位置が内側にあるので「揺れて折れないか?」随分と心配しましたが。
今のところ本当にきれいに動いてくれてます。動き始めは顔がヒリヒリして痛かったです。
ついでに、指に鉄板落として血豆も痛いです。
ps
今、新潟県西区をはじめ元旦の地震で傾いたり、亀裂が出来たお家のご相談が入ってきてます。
弊社は1班体制の小さな会社であることに誇りを持っております。たくさんのご依頼には応えられないですが、誠意を持って対応させていただきます。
土台揚げ沈下修正の場合、曳家職人は上部構造の癖を知っていますので、肝を掴んだ施工が出来る。と思います。
よろしくお願いいたします。
hikiyaokamoto@gmail.com 090-5143-0607
ps2
こんなところを通勤してます。50歳まで高知で暮らしていた身には都会の運転は本当にきついです。
なので、地方大好きですからよろしくお願いします。
能登半島地震で住宅(建物)が傾いた方への参考意見を取り急ぎ書きました。
まず新潟県で起きている液状化による地盤沈下で建物が傾いているものと、地震の揺れによって建物が変形しているものとでは修復方法は大きく異なります。
①沈下修正工事→水平を直す工事
②家起こし(軸組補正工事)→垂直を直す工事
です。
今回の地震では震源に近い地区では①と②の工事を同時に行わなくてはならない建物が多いと推察できます。
沈下修正工事は1階が20坪程度の2階建てで一般的に300万円から1200万円程度。
家起こしは400万円~1200万円程度。
それぞれ給排水衛生設備工事や外構の復旧工事など付帯工事が掛かります。
特に家起こしの場合は、屋根と構造部分を遺して壁や床の修復費用も発生しますので合計すると、それなりの費用が発生します。
なので、下手に修復しようとすると、新築でローコスト住宅が建てられるほどです。
建物のコンディションや生活再建とのバランスを考えなくてはなりません。
それらを考えたうえで、沈下修正工事もしくは家起こしを依頼しようと考えたときの業者選びの参考意見としては、
その会社の施工実績やブログ等で施工品質に関する姿勢を判断してください。
かつて良い業者だった。と言われていた会社であっても、職人の高齢化、受注の苦しさ、時代に合わせたヴァージョンアップが出来ていなければ大金を預けるに値しません。
金額だけを判断基準とすると、痛い目に逢います。
宣伝になりますが、(そのつもりで書いているわけではないのですが、他に類書がないため)
沈下修正工事に関しては「曳家が語る 傾いた家を直す 沈下修正 ホントの話」(主婦と生活社)。
家起こしに関しては「曳家岡本口伝 構造から直す本気の住宅再生」(創樹社)という2冊があります。
参考になると思います。
もちろん当職への直接のご相談も対応します。
webメールでのアドバイスは無料です。お仕事のご依頼なくとも気にせずご相談ください。
hikiyaokamoto@gmail.com