曳家

  • 一般住宅の曳家工事

    近年、曳家工事は、やや値上がりしています。
    理由は色々とあるのですが、おおよそ以下の問題が考えられます。

    • 依頼が少ないので経験を積んだ職人ばかりでは無いので施工日数が必要となる。
    • 東日本大震災以降、曳家したことで躯体が弱くなるような施工はより出来なくなった。
    • 40年前に比べてリビングを拡く採るために1階部分の柱や壁が減って、曳家するための細工や手間が増えた。

    したがって、現実的に曳家を依頼して採算性が合うのは、築浅(築15年以内)でまずまず費用を掛けて建てたお家か?どうしても残したい文化財や古民家になると思われます。

    今では、ただ節約したいからと、曳家する。ということは難しくなりました。

    以下の画像は2015年11月~2016年1月までの間に埼玉県東大宮駅近郊で曳家した一般住宅のものです。
    直線にして45m。途中3回、向きを変えて、最期に90度方向転換しました。
    地盤の高さも途中3回、最大で80cmほど異なる中を曳家させていただきました。

    地盤が悪く、相当、気を張った施工をしましたがクロス(壁紙)に、よじれが入って張り替え費用が発生しました。

    「構造塾」Ms構造設計の佐藤実先生や「曳家・家起こしの技術」の著者・岡部 則之先生, 宮崎 貴重先生や近隣行政なども見学に来てくださり「土佐派の曳家」を知っていただく機会を得ました。



    さいたま市の現場、順調に回転中

    こんな風に支点に対して、進む距離に応じて角度の調整をしてゆきます。

    それにしても床下で鉄骨の間を潜り抜けてあちこちするのは身体が痛いです(汗)

    そして「曳家」で重要なことは「どこで反力を採るか?」です。

    進行方向側に新しい基礎などあればそこにワイヤーをかければ良いのですが・・

    こちらのように「盛り土」だと、そうも行きません。重機を所有されている業者さんなら、そうしたものを据えつけておけば良いのですが・・うちは曳家の工具以外しか持っていないんで・・余分に持参しているH網(鉄骨)を組み上げて既存の基礎や道路に突き当てて、台付けを固定します。持っている道具を上手く使いこなすことが「職人」と呼んでいただけるものかと思います。

    日々精進です(汗)



    再び「盛り土」の上に移動してゆきます。

    きっとまた沈みます・・なので、沈むであろう分を予測して、なだらかに高く道を敷いておきます。

    そして、鬼のように枕木とジャッキを惜しまず使っています。

    今回はお家が大きいこともあるのですが、安定度を高めるために車輪も大量に増やしました。

    歳とると心配性になると、いつも書いてますが・・近ごろは開き直って「日本一ジャッキを使う曳家職人」で憶えてもらうのもありかな。などと思うようなりました(苦笑)

    コンパクトな資材で最大の効果を上げられるのが優秀な職人ですが・・過程はどうでも良いんで、よりきれいに家を傷めず曳家するために自分の技量で出来ることをするだけなんだ。

    と・・・恥ずかしいですが、やってます。

    大手さんと違って、親方本人が「いてて・・」と床下に入り。

    曳家する間も、なぐりを持ってレールを管理しつつ、家の揺れに顔面が痛くなるくらい緊張して、曳家してます(汗)地盤の悪いところを曳家するのは、本当にたいへんです。

    もちろん充分な予算があって、整地したうえを曳家させてもらえるなら、それが良いでしょうが・・通りすぎてしまえばなんの関係も無い土地の整地に、例えば80万円も使って良い予算をくださる工務店やお施主さんはいません。(いたら嬉しいけど)なので、鉄骨を繋ぎ、長い枕木を使い精一杯、安定性を高める細工をします。

    それでも盛り土は下がります。どこが荷重で沈下したか?を色々と見極めながら、「これ以上はいかん」「もう一旦、停止」と声を張り上げながら・・手直しをしつつ、やりきります。

    取材してくださっているテレビスタッフが「家が揺れていると言って止めたけど、自分とかには判らないんですけど」と言います。誰も判らなくても良いんです(笑)自分が最高に良い状態で曳くために心配しているだけなんで(笑)



    曳家岡本は2日から現場を再開!とうとう据えつけしました!




    二棟で半年間に及ぶ長期工事を終えて

    仕事の出来には満足しているが

    2棟で半年間に及ぶ長期工事でした。予定を1カ月半くらい越えて・・のようやくの着地です。
    理由は幾つもあったんですが・・なんと云っても「盛り土」にやられました。

    仕事の出来には満足しているんですが・・
    今日、日曜日なんで現場に来てくださいましたお施主さんに無事に据えつけの終わったお家の中を見ていただきました。相当良い出来だと自負していたんですが・・結果は10箇所以上のクロス(壁紙)のしわ、やふくらみが出来ていたそうです。

    悔しいです。残念です。これ以上無いくらい丁寧に一生懸命に施工させていただいたにも関わらず、そんなにもクロスが傷んでいたなんて!
    もちろん3度に亘る方向転換、そして家の向き変更、40mほどの移動を盛り土の上で施工したせいではありますが・・・それにしても、良い出来の工事の手ごたえを感じる現場でした。

    弟子の飯田くんと2人して悔しがりながら帰りました。

    飯田
    「最近の家は柱が少なすぎるがですよ。(曳くと少ない柱に負荷が大きいので)柱、増やして欲しいですよ」

    化粧は少し傷みましたが、お家の骨組みは大切に大切に曳きました。どこも傷んでいません。
    正直、これ以上の施工は出来ないと思います。
    だから悔しいです。

  • 古民家(石場建て)の曳家例

    古民家の場合は、土台がありませんので、「添え柱」を取り付けて仮設の土台を造ります。

    そのため一般住宅に比べて資材がおよそ1・7倍程度必要になるのと、壁や床の撤去、復元費用が発生します。








  • お寺の曳家例

    軽いレールを使ってます。

    一般的には1mあたり9㌔の重さのレールを使うのですが、うちは6㌔です。これによって重機が入らないような狭いところにも人力だけで搬入、設置が出来ます。

    線路をたくさん敷きます。

    最近では大きな鉄道用レールを使って曳家工事される業者さんもいらっしゃいます。で、その分、仮設で敷くレールの本数を少なく出来ます。大きな建物の場合は効率的ですから、それが良いかも? うちは、軽い小さなレールですから、その分、仮設レールをたくさん敷きます。

    参考画像のお寺では、6道(12本)のレールを敷きました。手間と資材量は必要ですが、バランス良く動かせます。

    曳家工事をする間に、細工をたくさんします。

    曳家工事では、工事期間中だけでなく「据えつけた」時の基礎の強度に気を配らなくてはいけません。

    なので、沈下修正と同じく柱下から微妙に逃がしながらも荷重をささえられる部位に鉄骨を組まなくてはなりません。ですが、長い移動の旅をする間も可能な範囲で柱下などで荷重を受けられるよう、鉄骨を利用しながら詰め物をしたりしています。据えつける直前にこれらは採り省きます。

    少人数でやってます。

    居住していらっしゃる場合はそうもゆかないですが、お寺などの「住まい」でない場合は、無理のない範囲で少人数でやっています。これは単に「職人」の数が少ないゆえでもありますが、「親方」の目が届く動きが出来ます。その他にも、幾つかの特長があるんですが。 それは専門的になり過ぎますので、ここではカット。 沈下修正に於いても、土地に余裕のある場合は、移動させておいて地盤改良や基礎の造り直しをするがベストですから、ご検討ください。曳家 岡本最新式の工具ではありませんが、とにかく、丁寧が売りです。

    価格と施工品質の合う現場でご検討くださいませ。 日本には、今では曳家が存在しない地区もあるそうです。 我々はご招聘いただければ全国出張いたしますのでよろしくお願いします!

    詳しくはブログにて。

    以下は「据えつけ」作業している日に書いたブログです。 読み返してみると、ぴりぴりしている状態が伝わってきます。 ご参考までに掲載しておきます。

    ~ ブログの記事から抜粋 ~

    昨日の午後から、建物を最終位置に「据えつける」ための微調整を始めています。

    一旦、降ろすために解体した枕木をがっしり組み直して、その枕木の上を「ずらす」ように数センチを動かします。
    家は曳かなくても高く揚げたり、下げるとその過程で軽い方や重い方に「踊り」ます。
    なので、最後に微調整をしなくてはなりません。
    これが地味で見た目も進まないような作業です(苦笑)

    今回は残り25cmで着地という時点での微調整です。
    建物が軽ければ、直前でも出来るのですが、今回は白壁が重いので、補強材を取り外す以前に、動かします。

    こういう「精度」と「損傷」のどちらを優先するか?で仕上がりは変わってきます。
    自分は「強度」にこだわりたいですから、精度が5%程度落ちても「損傷」を少なくする方を選んでいます。

    昨日は珍しく2人の弟子を叱責しました。
    当然、理解しているだろう過程を飛ばしていました。
    それぞれがそれを「恥」と感じ、「もう一生忘れません」と言ってくれてますから、大丈夫でしょう。
    職人も「馬鹿」は駄目です。それはただの作業員です。
    凄い技術を持った方はいらっしゃいます。
    自分たちは、愚直に「丁寧」「誠実」を大切にしてゆかなくてはなりません。

    この施工例は川越市小江戸地区にある大正5年に建てられた木造三階建ての鰻屋「小川菊」さんの耐震化に伴う新設の基礎を造るのと、沈下修正を一遍に行うために、鉄骨で仮の土台を造って、その上に枕木を組みました。

    この作業によって、心配なく古い柱を取り換えて、且つ、基礎を新造出来ました。地元の大工さんや基礎屋さんとの協働作業になります。

  • 大型重量住宅の曳家例

    曳家岡本では重量のある建築物の場合は、提携会社にご協力をいただき施工しております。

    この現場では、1mあたり50キロのレールを使用しています。そのため一般住宅に比べて資材がおよそ1・7倍程度必要になるのと、壁や床の撤去、復元費用が発生します。