沈下修正
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- 沈下修正の種類と工法
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沈下修正に関しては大きく分けて4つの工法があります。
- アンダーピニング工法
- 薬液樹脂注入工法
- 耐圧板工法
- 発泡ウレタン工法
- サイドピニング工法
- 土台揚げ工法
(曳家工法、プッシュアップ工法、揚げ舞い工法とも呼ばれることも。)
それぞれ工法に長所短所があります当職の工法は6に当たります。
他の工法との大きな違いは、「可視化」されている工事です。基礎はそのまま残し、土台(木部)から持ち揚げます。
ですので布基礎や石場建ての古民家などで活用されます。
「どれぐらい揚がったか?」「どこにジャッキを掛けているか?」が目に見える工事です。基礎下に潜って、トンネルを掘って基礎ベースと一緒に持ち揚げる工事とはまた違う繊細な細工が可能です。
精度や建物に与える損傷の少なさではもっとも優れています。但し、他の工法と違って地盤改良を伴った工事ではありませんので、
地盤に必要とされる反力が獲れる場合で無いと再沈下が起こるリスクは否定できません。もし予算に余裕があれば薬液注入による地盤補強工事と併用されるとより良い品質の工事となります。
工事金額
1棟1棟のそれぞれの違いがあります。新築ではありませんから、単純に「施工面積」で算出できるものではありません。その家に触れて、使われている木材や壁などを、見せていただきながらお見積りさせていただきます。
例えば、土台部分が「桧の3・5寸(10・5cm角)」のものと。「ベイツガの3寸(9cm角)」では、前者が1・5倍程度の強度があります。したがってジャッキを掛ける数量を減らすことができますので金額は下げられます。
また床が大理石貼りなのと、一般的な床材では施工手間が全く違ってきます。それでもおおよその目安としてですが。1階部分が18坪程度の住宅で、液状化で一方向に全体が傾いていた。最大沈下部分が14cmだとします。沈下修正+基礎補修+束交換まで含めて、約250万円。これに、交通費・遠方の場合は宿泊費を足していただいています。同様の大きさの住宅で、不同沈下と云って部分的に傾いていた場合は施工面積にもよりますが。約60万円~となります。
沈下修正・傾き治しの工事手順
基礎をはつりまして、土台を持ち上げられるようジャッキをかけます。
ジャッキ穴を小さくするために厚い鉄板を渡して、基礎の内外にジャッキを掛けます。
この手間を行うことで(通常は)コンクリート基礎に入っている横筋を切らないで済ませられるます。
アンカーボルトは当職は、土台より下面で全てを完結させるために、はつり出しています。
ただ近年の家屋の場合はアンカーボルトがたいへん長いことが多くなってまいりました。
この場合は基礎を傷めない方を優先して、ボルトを一旦切断します。工事終了後に溶接します。
レベル(沈下)の測定は、床上でのレーザーポインターでの調査だけでなく。床下でも再度行います。
更に、レーザーが届かない等の風呂場下などは、旧来の水ホースを使って数字を出してゆきます。ただ、実際には、風呂場や玄関などのタイルなどがある部分の沈下が1cm程度である場合、1cmの修正にこだわって。風呂場等の修復費用が嵩むよりは、「許容範囲」としてその手前まででやめることがほとんどです。それらはお施主様と話し合いながら決めてゆきます。
実際に家をジャッキアップする際には、当職は1か所につき3mm程度づつしか持ち揚げません。
もちろん、床下を這いながらジャッキを巻いてゆくわけですから、1か所を少しでも多く揚げれば、巡回回数は減るわけですから手間は少なくなります。
しかし、それでは家が傷みます。ゆっくり丁寧に揚げてゆきます。家が発する「音」を聴きながら作業しております。それゆえ、出合い丁場は避けていただきます。
また不同沈下の場合には、土台のほぞが抜けて「家が開いている」(柱がまっすぐに建っていなくて八の字になっている)場合があります。これらは、基礎コンクリートごと揚げる工法では直すことは出来ません。
曳家により土台揚げの場合は、水平を直した後に、土台にジャッキを斜めに「突き掛け」して押し込むことで、開いた土台を直し、柱を垂直に戻します。木材ですので、経年により「癖づいている」場合は土台に羽子板ボルト等を取り付けて「開かないように」固定します。
家が水平に戻りましたら、次は基礎補修です。
3・11東日本大震災が起きてからは、「家を水平に直す」だけではなく「安心して暮らせる強い基礎を修復する」という新しい使命が生まれました。震災が起きて暫くの間はたいへん忙しかったため、左官職に基礎補修をしていただいていたのですが。納得ゆかない出来に3度も壊して造り直してもらいました。
あまりにうるさく言うので「では、岡本さんの考える強度のある基礎補修を見せてくれ」と云う話になって、お互いが利益を度外視して、自分で施工しました。
直して固定してからの「家の人生」がはるかに長いのです。
そのため基礎補修は強度にこだわらなくてはなりません。
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- 曳家岡本では、お寺の沈下修正を行っています。
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出来れば一旦、全体を1mほど持ち揚げて、土台を入れて 布基礎の上に据えつける工事もしたいですが・・ 「次の50年目」には建て替えも検討される場合は、そうも行きません。
お寺や神社は檀家さんのご理解があってはじめて施工できます。 沈下修正であれば70坪程度まで。家起こしであれば30坪程度までのお寺を自社保有資材で賄えます。
※お寺は壁や土台が入っていないために柱が斜めになっている場合があります。それらは水平を直すだけでは元に戻りません。
※曳家岡本の家起こしは屋根は剥がさないままで施工出来ます。大手さんほどの大きな工事は出来ませんが、寺社仏閣の修正工事としてはお値打ち価格で施工しております。 どうぞお気軽にお声かけください。
今回は、たぶん100年くらい前に若干、傾いていたのを本体を直さないまま、敷居の上に、敷居を被せて建具調整をしていた箇所を発見!
古くなっているだけに一見オリジナルか?と思われる部分も探してゆくと、手を加えられた部分が見つかります。
これは、梁の通りを見て画面右側の柱への負荷が大きいので、「持ち揚げられない」と読んで、手前の鴨居を押し揚げている場面です。
右側の柱のさらに右側は画面に写っていませんが、新築部分の廊下が絡んでいましたので、そちらを撤去しないでの施工という条件のために、柱に金具を取り付けることが出来ませんでした。
そのため、「添え柱」をコーチボルトで留めました。
お寺の施行事例2
こちらのお寺は、床下が低かったために、全て敷居より上で、添え柱を取り付けました。タワーのように?2山の枕木を組み上げているのは、真ん中の床柱が白蟻被害により、取り換えが必要なのですが。天井裏を見ると、この柱が絡む部分で梁が継いでいるので、やむを得ず両側に組んだわけです。
お寺の修復画像仕上がり
腐っていた柱を、大工さんに「金輪継ぎ」で修復しました。
1本の柱に対して3日ほど大工さんの人件費がかかりますが。
良い治し方です。曳家の技術を使っていただくことで、骨材を健常に直すことが出来ます。お寺の施行事例3
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- 大型倉庫等の沈下修正
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曳家岡本では、鉄骨建て200坪程度までの倉庫や工場を自社保有資材のみで沈下修正、曳家工事できます。
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- 耐震リフォーム工事
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例えば、開いてしまった土台や敷居を引き締めてボルトで固定する。
腐食した(或いは白蟻被害にあっている)柱を取り換えるために細工する。
全面リフォームをするために古い基礎を造り換えるために一旦、家を持ち揚げる。
「耐震リフォーム工事」や「柱の取り換え」等で私たち曳家の技術を使っていただけるお仕事の依頼が続いております。
曳家の技術には、他の沈下修正業者(耐圧板工法、注入工法、アンダーピニング工法等)とは、また違う曳家だからこそ出来る仕事があります。
目黒・会計事務所
こちらは、耐震リフォーム工事をするために計測したところ、不同沈下が起きていたので、沈下修正工事をご依頼いただきました。また該当部屋の基礎を、造り替えのために、枕木を組んで基礎を取り壊せるようにしました。
そして、以前の改築時に間取りを広く採るために、部屋の中の柱を採り省いてしまった為に、家の荷重バランスが崩れて、土台が開いてしまっていたのを「突き掛け」で元の位置へ戻しました。