奈良、一旦終了!夢の続きを見たいよな。
奈良県法隆寺のそばの古民家の曳家工事、一旦終了しましたので撤退です。
次は来年2月に新しく地盤改良された敷地に曳き戻します。
それまでの間、柱を掴んでいる金具が重さで、ずれないように柱下で荷重を受け直したり、H網を受ける枕木を拡く組むことで揺れを少なくしたりの細かな細工をしておきます。
曳家と相伴したことある大工さんの中には、「曳家は目を離すと、こっちに確認も採らずに柱にボルト穴を開けたり、壁を落としている」という経験をされた方もいるかも知れません。
そうなんです!柱に金具を充てて、添え柱を取り付けることを止めて、12ミリ以上のボルトを貫通させて添え柱を取り付けてしまえば、施工中に、金具が滑ってずれたりしませんし、手間も減れば、金具の運送約2トン分の輸送も、しなくて済みます。めでたしめでたし。
いや、すみません!違いますよね。欠損率のことを考えた場合、そんなにパコパコ穴を開けて良い訳ありません。かつて自分がまだ若くて今よりもっと世間知らずなバカ者だった頃に、同業者の手伝いに使って頂いた際に、そこの親方 が、物凄く豪快に柱にドリルで穴を開けていらっしゃいました。
その頃はまだ断面欠損率や挫折と言う言葉を知らない若僧でしたが、流石に思わず「柱に、こんなに穴を開けて構わないんですか?」と聞いてしまいました。その親方は満面の笑みで、「かまん!かまん!こうせんと石場建ては揚げられんもんよ(笑)」と答えて下さいました。
実は既に40年前から、弊社曳家岡本では「柱に穴を開けない」細工をずっと工夫して来ました。やはり大工の弟子を終えてから曳家に転身した先代にしてみると粗っぽい細工が赦せなかったようです。で、その息子はビビりなんで更に細かい細工を追いかけてるわけです。
休憩時間に堅田さんや、須賀棟梁に「親方、金具を締めるボルトのナットは30ミリに換えれば規格品があるから、ずっと工具代を節約できるんじゃあ無いんですか?」と聞かれて、
「自分もそれは考えて、以前取り寄せて試してみた。で、30ミリと35ミリのナットの締め付けの力に、ものすごい差があったがよ。たぶんオヤジも同じ失敗を50年前に経験したがやと思う。昔から、こうだから。じ ゃなくて試してみゆうがよ。」
家を曳いていると通りすがりの測量屋さんや、観光の外国人に「スゲー」「本物初めて見た!」と、興奮して頂きますが。
もっと
「うわーきれいに曳家してる!」
「土壁が落ちてない!」
「床の間の床を剥がしてない細工スゲー!」
とか言ってもらいたいもんです。
まあ、こんなこと書いてると初代 麺通団メンバーのラーメン店「はまんど」の待機席で、須賀棟梁が島田棟梁に向かって
「けんど、島田さん。親方のブログ読んでも半分くらいしか意味判らないでしょう!判らないこと書いてるから仕事獲れないんですよ。このオヤジは(笑)」と糾弾されるわけですいやほら、そんな難しいこと書いてないんだけど、単に一般的で無いだけだよな。
ps難しいと云えば、昨日は「伝統的後方のための木造耐震設計法」出発報告講演会(京都)に聴講に出かけてました。
はっきり言って、自分なんかだと1割くらいしか理解出来なかったです。
それでも、どうせ判らないから聴かない。では、無くて、よく判らないけど何度も聞いていれば判ることが少しずつですが増えて来るだろう。
計算方法な どは判らなくても、仕組みを理解することが出来れば、ちょっとは現場に活かせられるかな?とネバーギブアップ(笑)な気持ちで参加させて頂きました。
きっと物凄く素人な部分から少しずつ学ばせてもらっています。
ロビーで、立っていたら滋賀の宮内棟梁や、久留米の山田さん、山田さんのご紹介で京都の数寄屋大工の籏さん、にお声かけ頂きました。
そして現在、奈良で相伴させて頂いてる宮村棟梁のご紹介で伊藤平左ェ門建築事務所の望月さんにご挨拶。
休憩中には京都の建築士さんで「構造塾」全国大会熊本大会の事務局長 寺川さんには声かけて頂きました。
兵庫の建築士、鶴谷さん、兵庫の宮大工広島さんと、三重県の建築士小林さんとは一緒に受講して頂きました。
夜は京都と云えばこの方!(笑)地盤の神様 株式会社伸光の西村社長と2人懇親会!
「あんなあ岡本さん。ほんまの話、一本の柱にどんだけの荷重がかかってるか?家持ち揚げげてる職人としては建築士の言ってる数字をどう考えてるの?」
「傾いてる側に荷重が集まってるのが水平に治ってゆく時の重さの違いを誰もが体験できる施設を作って、勉強させたらえいよなー」などと、違う視点からお話をして頂きました。
8年前、本当に仕事が無くて困っていた自分が今は京都でのセミナー会場で何人かに声かけて貰えていることが夢の様です。
夢はいつか醒めるものですが、出来れば夢の続きを堅田さんと須賀さんに見て貰えるようなレールを敷いておきたいもんです(笑)
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