西村賢太も逃げ出す現場のリアルです。
夏休みスペシャルとして、零細事業者としての作業員との距離感や、指導方法のリアルを書きます。
若い理想に燃える親方や棟梁さんからは「曳家岡本、アナログ過ぎる!」「ブラック企業だ!」と言われるかも知れませんが。これが来年還暦を迎える自分なりの現時点での到達点です。
まず自分も本当は、クェンティン・タランティーノのような監督方法に憧れていますし、かつては真似していました。 タランティーノ監督は演じる役者に向かって怒鳴らないことで有名です。そばまで行って、耳元で囁くように「良かったよ。」「でも、もう少しこんな風にもやってみてくれませんか?」と話して、もう一度撮影をされるそうです。 なんてカッコいい!スマートです。
ちなみにNHKの大河ドラマの大道具さんに参加していた友人も「岡本さん。NHKのスタッフ凄いですよ!誰も怒鳴らないから物凄く静かなんです。でも、凄いスピードで進んでゆくんです。」。これらは、この仕事をやりたい!と集まって来ているプロフェッショナルの世界だからこそのカッコ良さですよね。
逆に怒鳴り声の聴こえるカッコいい仕事場の話も書きます。 矢沢永吉さんのツアー関係者から 伺った話です。 矢沢さんはツアーが始まってからも、バックミュージシャンや舞台スタッフに厳しく駄目だしをしてゆき。改善されないとどんどん入れ替えてゆくそうです。 これはきっと矢沢さんが「観客は矢沢の世界を楽しみに来てくれているんだから、今、自分が創りたい音を妥協せずに監督しなければ。」という責任感からなんでしょうね。
はてさて、これを零細事業者の建築現場に置き換えてみます。 何の世界でもそうでしょうが、上に立つ人間はバカではありません。
事業を継続してゆく中で最低限の社会的ルールに対応できなくては淘汰されてしまいます。
しかし消去法で肉体労働を選んだ人間の多くは、「その日が終われば良い」という投げやりな考えです。 中には現場で一緒に働いている大工さんや、仲間に借金をして(それも虚偽の理由を話して)返さないままとなって。親方(当職です)の知るところとなり、給与から天引きしたり。彼の金遣いを管理するために、当職も昼飯を飲み物込みで500円以内にする。という伴走をしたりしていたこともあります。 それでも彼は「週刊ジャンプ」の発売日に昼休み、同書を路上で読んでいるのを発見して問い詰めると平然と「ゴミ箱の中から拾った」と云います。
また別の人間は明らかにお酒のせいで労働がきつくぜいぜい言うので飲酒量を問うと「500mlのビールを2缶だけですよ」と云います。 しかし、これも同宿している仲間に尋ねると、少なくとも4缶は飲んでます。と証言してくれました。 本人を仕事終わりで呼び出して問い詰めて「誰が嘘をついているんだ?」と聞くと最後には「僕です」と言いました。 本人に「続けたいのなら禁酒して欲しい」と伝えました。 こうした人間を使いこなしてこそ「親方」なんでしょうが。 自分はすぐに諦めてしまいます。 最近は堅田さん(先槍りです)に、窘められることが多いです。 みなさんは、見た目で堅田さんの方がすぐ怒るだろう。と思うかも知れないですが・・どうやらそれは逆のようです。
弊社のような小さな建築業者の場合は、受注も安定しませんし、全国をサーカス団のように大量の資材を運んで旅するのは肉体的も精神的も辛いです。
こんな悪条件でも一緒に廻ってくれているのは、「曳家カッコいい!」「いつか起こる南海大地震の時のために土佐派の曳家技術を残したい」と思ってくれる気持ちだけです。 せめてもっと給料を払えれば良いのですが・・弊社ごときでは大手同業者の2割~4割程度安くて良いものを提案できなければ受注できません。 前回のブログにも書きましたが「夢の続き」が見れるように、引退までに「曳家岡本」をまあまあのブランドに育てて次の世代にバトンタッチすることが「運命」なんだろうな。
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