2019年11月7日 18:19

台風被害で家が浮く!

千葉県や東北を襲った台風19号の建築物の被害については、主に屋根についてマスコミがたくさん書かれていますので、 自分は曳家目線でまだ、ほとんどの方が触れていらっしゃらない住宅被害について書きます。 どなたかの参考になれば幸いです。



まずは、弊社の千葉県にお借りしております倉庫も市原市にありまして、ゴルフの練習場に隣接しています。 ニュースを読んだ時に、フェンスからは500mほどは離れていますし、資材のほとんどが現在は徳島と奈良の現場に出払っておりますので、万が一、うちの倉庫だとしても次に関東での現場が始まるまでに片付いてくれていれば良いよな。というものでした。

その後、ポツリポツリと住宅被害のご相談が入り始めました。 以下の相談例は全て千葉県内からです。

相談例① 高麗門が斜めになった。

田舎の農家さんの中には、立派な門があるお家があります。 門の多くは、柱2本だけですから、風で斜めになったうえ、礎石から30cmほど外れてしまっています。 近年の建立であれば、基礎から50cm程度の長さのボルトを柱の真ん中に入れてあって倒れないようにしていますが、古いものでは石の上に、せいぜい10cm程度のホゾを入れて置いてあるだけです。 一旦、曳家して基礎を造り変えて据え付ける。もしくは位置を変えて良いのなら先に基礎を造っておいて、そこに曳家するという案を出させて頂きましたが。

相談例② 神社が斜めになった。

同様に、柔構造である神社が風で変形してしまいました。 これは弊社がたびたび行っている、家起こし(軸組補正工事)を行うことでもとに戻すことは可能です。 ただ、1度、変形した柔構造の建物は剛構造に換えて固めないとまた変形しますので、そうした大工工事も同時に必要です。

相談例③ 家が傾いた
盛り土の上に建てられているお家が、2度の豪雨で土が流れて、沈下してしまったそうです。 これは、アンダーピニング工法などで無ければ、早期の工事は施工できません。地盤がある程度の固さに戻るまでという意味です。アンダーピンであれば岩盤や支持層まで杭を打ちこんで反力を獲るわけですから、施工できます。

相談例④ 家が押された 裏山の土砂が崩れて、1階部分の柱が折れた、
もしくは割れが入った。 これも家起こしの技術で直すことは出来ます。 起こした後に補強のために耐力壁とかで固めると良いのかも知れないです。


弊社以外の情報としては、薬液注入工法で有名な平成テクノスさんには、長野県3件と福島県1件から、堤防決壊による浸水でベタ基礎が浮力で一瞬浮いて事後傾いた住宅の傾斜修復の工事の打診が来ているそうです。


平成テクノス(株)さんは国内はもとより台湾で13階建てのビルや、クライストチャーチでの地震の後の復興工事で大活躍された実績をお持ちです。

含水率を含めて、地盤のN値がどの程度まで戻られたら施工可能なのか?教えて頂きたいです(汗)

さてさて、上記のような案件を含めて、曳家目線での一番良い解決方法は? 敷地に余裕があるのなら、基礎を残して、一旦、曳家しておいて、古い基礎を撤去~地盤改良(鋼管杭等)~新しい基礎を造って、そこに曳き戻すということも考えます。

ついでに言わせてもらうと最近の住宅の多くは、高気密化されていますから、濡れてしまった壁は剥がして取り換えないと、カビだらけになりますから、1階部分は壁を剥がしておいて柱を掴んで曳家する?

もしくは据え付けの瞬間に、柱を掴む(上腰工法)に切り替えれば、下腰工法で曳家すると出来てしまう基礎の開口部を無し、に出来ます。



ただ、この曳家工法の場合には施工中、引っ越しが必要です。

工期も4か月~5か月かかります。

おおよその例)
1回目の曳家       約1か月
地盤改良、基礎工事 約2か月
2回目の曳家     約1か月
設備関係の再接続   約2週間

費用的には、木造2階建て(1階20坪程度)として、曳家に800万円、地盤基礎に400万円?付帯工事で400万円?概算でも1600万円くらいはかかる計算になりますから、 ある程度、良いお家で無ければ費用対効果を考えると、ローコスト住宅の新築の選択肢もあるかと思います。

昭和40年代、当職の故郷・高知県では度重なる浸水被害から住宅を守るために、「嵩上げ工事」がたいへん盛んに行われた時期がありました。 数年前には京都・福知山でも周辺一帯での嵩上げ工事が行われいました。

もしかすると、今後、関東でも「嵩上げ工事」に選択肢の一つとして検討されるようなるかも知れません。


ps しつこいですが・・嵩上げ工事もそうですが、専門職と何となくやっている業者を一緒にしないでくださいね(苦笑) プロの大工が建てた家ですから、そう簡単には壊れません。ジャッキを掛けて押せば揚がります。
でも、人間で云えば、関節をボロボロにして揚げている業者がいます。 ブルーシート貼り18万円は判りやすいから、皆さん問題にしてますけど。
もっと高額な200万円~1200万円くらいもかかる沈下修正工事の、にわか業者をなんでもっとシビアに見ないのでしょうか? 高額を使うのですから、ぜひ勉強されてから発注してください.


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2件のコメント

  • 大橋 満 より:

    据え付けの瞬間に、柱を掴む(上腰工法)に切り替えれば、下腰工法で曳家すると出来てしまう基礎の開口部を無し、に出来ます。→本当に切り替えできますか?

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能登半島地震で住宅被害に遭われた方へ

以下、実務者の立場から書かせていただきます。

  1. 液状化による地盤沈下を直す「沈下修正工事」と地震の横揺れで歪んだ建物を直す「家起こし(軸組補正工事)」は別ものです。

    水平を直すのみの工事と、垂直を直す、もしくは水平を直しながら併せ技で垂直も直してゆく工事です。

    おそらくは新潟県は沈下修正工事のみで可能です。石川県では家起こし、および座屈した柱の取り換えなども必要になると思います。

  2. 工事の着工時期についてですが。皆さま1日も早い修復を望まれていらっしゃいると存じます。しかし、地盤が充分な固さに戻るまでは施工出来ません。

    余震がこのまま収まったとして、おそらくは最低3月頭くらいまでは着工するべきではありません。

  3. にわか業者、悪質ブローカーにご注意ください。

    普段、ご縁が無い業種ですから唯一、判断できる金額のみで選ばれることもあるかとあります。

    家は安心して眠れる場所でなくてはなりません。

    歴史を背負っていない利益だけを考えている方と誠実な工事をされている業者を一緒にしないようしてください。