2020年5月16日 20:21

古民家再生は足元から!

千葉県夷隅郡御宿町で築100年越の古民家の沈下修正工事+基礎の造り替えのための嵩上げ工事をさせていただいています。

今回、古民家再生に携わる建築士さん、工務店さん、そして「古民家直そうかな~」と検討されている方にぜひ見ておいていただきたい画像があります。


いかがでしょうか?
古民家の多くは不同沈下を起こしているのですが、その中の大きな原因の一つは、現代とは違う気象条件下で建てられたゆえに熱帯化が進む中で立ち上がりが「ほぼ存在しない」ので土台を廻している場合、ご覧のように、腐って潰れています。

今回はお施主さんが大工さんということもあって、沈下修正をした後、「土台を取り換えないと駄目だから」と床と壁を大胆に解体してくださっています。
実際、ここまで解体していただけると作業も早いですし、実は大工作業もスムースにできます。
文化財等で「可能な限りオリジナル部分を残さないといけない」という訳でも無ければ、「家は安心して眠れる場所」であるべきですから、構造的に強いものに改修するのは当然かと思います。

よく「そこまでの費用が無いから、床で直す」と云う方がいらっしゃいます。
それはやむを得ないでしょうが・・床下はこの画像のように、グズグズに潰れているから不同沈下が起きているわけですから・・
潰れたままの土台の上を化粧直しするだけに2000万円も掛けるのは・・「知らないから」でしょうが・・。
建築士さんは、きちんと状況を説明してから、お施主さんに選択してもらって欲しいです。

何にも説明しないまま「ああ~~200万円くらいで直せますよ~」というリフォーム営業の方は駄目ですね。

ところで、毎回、似たような画像をupしてますので少し解説をしておきます。

まずH鋼を組んで、それをレーザーポインターで水平を測って、基準を造ります。

この時、沈下している部分は建物本体が持ち揚がって来ますので、敷居がH鋼に当たると困るので、それなりのスペースを空けて組みます。
逆に隙間が大きくなるところもありますので、そこらへんは測りながら、決めます。
あまりスペースを獲りすぎると、それだけ枕木が余分に必要になりますので、10cmの高さに違いにも神経質になります。
必要なところに充分な資材を使うために節約できるところは可能な限り節約します。
各地への輸送もトラック1台増えると大きな費用増です。

曳家岡本では、水平に直したH鋼(仮の土台ですね)から反力を獲って、全ての柱に添え柱を取りつけて、それをジャッキ2台で1本ごとに微調整して行きます。
業者さんによっては、「嵩揚げするのなら、後で新しい基礎天に据えつけるんだから、最後にはきれいに揃うから、そんな手間をかけなくても良いんでない?」と考える親方もいらっしゃいます。

まっそういう考え方もありますが。
はじめに、建物の歪みをきれいに直してから揚げたり下げたりした方が、家が傷まないですから弊社では毎回、先に直します。
この作業をする為には建物を支えておくジャッキ以外に柱の本数×2台のジャッキが余分に必要になりますが・・
そこは「必要」と考えています。

曳家岡本Tシャツのバックプリントには「不易流行」という漢字が入っています。
これは「大切な基本精神は変えないけど、時代に合わせて変えてゆくところは変える」と云う意味なんですが・・
こちらのお家もさらに100年安心して住めるお家になるように心を込めて作業してます。


ps
家族と暮らすと「スーパーサラリーマン左江内氏」並みに、
「おい!直也!あれやっておけ」とか「パパの電話で打ち合わせしているドヤ顔な話しが聴こえると気分が悪い」とハネ子のような次女が出て行くような毎日ですが。
夷隅郡御宿町で心地よい風や緑に包まれて仕事していると・・このまま夷隅に住みたいな~と思います。





コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

1件のコメント

  • 辰己(yano)有里 より:

    お疲れ様です!
    家族とのkeep distance、心地よい風や緑の癒し、まさにまさに、まさに同感っス😁
    日増しに扱いが酷くなるから、今すぐクルマに布団敷いて家出したくなります!

最近の投稿
コメント
アーカイブ
能登半島地震で住宅被害に遭われた方へ

以下、実務者の立場から書かせていただきます。

  1. 液状化による地盤沈下を直す「沈下修正工事」と地震の横揺れで歪んだ建物を直す「家起こし(軸組補正工事)」は別ものです。

    水平を直すのみの工事と、垂直を直す、もしくは水平を直しながら併せ技で垂直も直してゆく工事です。

    おそらくは新潟県は沈下修正工事のみで可能です。石川県では家起こし、および座屈した柱の取り換えなども必要になると思います。

  2. 工事の着工時期についてですが。皆さま1日も早い修復を望まれていらっしゃいると存じます。しかし、地盤が充分な固さに戻るまでは施工出来ません。

    余震がこのまま収まったとして、おそらくは最低3月頭くらいまでは着工するべきではありません。

  3. にわか業者、悪質ブローカーにご注意ください。

    普段、ご縁が無い業種ですから唯一、判断できる金額のみで選ばれることもあるかとあります。

    家は安心して眠れる場所でなくてはなりません。

    歴史を背負っていない利益だけを考えている方と誠実な工事をされている業者を一緒にしないようしてください。