社寺・古民家修復における根継ぎ
私たち曳家は、建築士さんや、大工さんの要望に沿って柱や横架材の抜き換え等が円滑に行えるような施工をさせて頂かなくてはなりません。
それが出来る程度には「構造」についての知識を持っていなくてはなりません。
上の画像は、柱の根継ぎをしているところです。
腐ったり、白蟻被害にあった柱を根継ぎする「金輪継ぎ」や「四方鎌蟻継ぎ」など手刻みの大工技術は社寺や古民家の再生には無くてはならない技術です。
一般の方はこれを見て、単純に「素晴らしい技術ですね。これでもう安心です」と言ってしまいがちですが。
実際には、普通に考えれば判ることですが、「継いだ柱は弱くなります」これは実験では本来の強度よりも35%程度しか無いということが数値化されています。
画像左手にある床柱が白蟻被害が酷かったために、これを抜き換えるために両側に枕木タワーを組みました。
これは上部の梁が幾重にも重ねられたものでそれらの荷重を確実に受けるために、こうした手間をかけました。
根継ぎは、こうした抜き換えが出来ない場合、主に予算的な問題ですが、四方差しなどで施工が困難で、「やむを得ず行うもの」であって決して「万全なもの」では無いことを建築士さんはお施主さんに説明していただければと願います。
ちなみに新潟の行列が出来る工務店として有名なオーガニックスタジオの相模社長は、昨年facebook上で、当職がツッコミを入れることを想定しつつ、10本以上の柱が金輪継ぎで修復された文化財の画像をアップされてました。
その金輪継ぎは、全て同じ高さで揃えられていました。
おそらくは作業を簡易に行うためだと思うのですが、悪意を持って見れば構造の知識が足りない意匠系建築士もしくは現場監督の指示なのかも知れません。
当職からの相模社長の投稿へのコメントとしては
「同じ高さでの根継ぎは地震時に於いて揺れにより弱くなるので出来る限りするべきでは無いのに、なぜ?こういう細工をしたのでしょう?」と書きました。
すると相模社長からは、
「岡本さん。これは見えつらいところを全て黒く塗った鋼材で補強しているんですよ」でした。
う-ん。誰もが見るであろう、本来は手本となるべき文化財修復でこんな施工で赦されるのか?
もしかして若く未熟な大工が、これを手本として誤った参考例にしてしまわないのか?を心配してしまいました。
上の画像は別の現場ですが、2階部分の床を剥がしてもらって柱をかなり高い位置で根継ぎするために掴んでいる様子です。
画面の中央に見える以前の粗雑な根継ぎの細工部分を切り落として取り換えるためです。
曳家が相判で参加させていただくからこそ出来る安全に、きちんと接合も含めての修復が可能です。
どうぞ曳家の技術を思い出してください。
ps
社寺、古民家修復に於ける鋼材での補強は近年では結露の発生ゆえ問題視されています。
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