2021年5月16日 8:27

クーパー捜査官のように

コロナ禍およびウッドショックもあって、多くの建築関係者が現場が切れています。
そして、仕事が少ないので無理に獲得するためにあり得ないようなディスカウント価格で受注している業者さんも出ています。
例えば、新築の際に必ず行う地盤調査であるスウェーデン式サウンディング 通常だと1棟 5ポイントで3万円というのが相場ですが。
現在だと12000円でされる業者さんも出てきています。
人件費、機資材の運搬費、報告書の作成費を考えると、とても採算が獲れているとは思えませんが。まあ、人様の営業スタイルをとやかく言う立場ではありません。

ここは、千葉県勝浦です。
この撮影している側にあったファミリーレストランが廃業されてました。
少し前ですが、建ててまだ3年のファミリーレストランが廃業するんで、建物をコンビニに再利用したいので曳家して欲しい。というご相談とかありました。

コンビニは店舗の前面に駐車場がありますが、ファミリーレストランは逆に店舗は道路側にあって、駐車場は奥にある。からだそうです。

曳家をやっていると、時々、こちらの想像もしてなかったような相談を頂くことがあります。
例えば、昨年、君津市でご依頼いただいた「ビンテージカーを倒壊したガレージから引き出す」工事や、掘削工事の影響で大きく沈下および歪んだ「アーケードの柱」を水平、垂直を直す。
しかも近隣店舗の営業に差し支えが無いように最小限の細工でお願いします。



↑の画像は、新小岩のアーケード街です。あくまで参考イメージです。

他にも「新築施工中の柱の長さが足らなかったので入れ換えのために持ち揚げて欲しい」というご相談や、先代がした仕事ですが、高知港にあったガスタンクの支柱が崩れてきて、それを直すために呼ばれたこともありました。

さてさて・・
それでですねーーー。実は2週間ほど前に、神奈川県で事故案件が出まして・・ご相談いただいて現地調査して来ました。
これも、初めて体験するタイプの仕事でして、しばらくは「身体に入って来ない」日々でした。
それが・・たぶん、無意識下で考え続けているだけなんでしょうが・・
まるで「ツインピークス」クーパー捜査官のように寝ていて、突然、答え?ヒント?が浮かんで慌てて起き上がってメモをします。

もちろんご依頼いただければ出来ると思う自信があるからこそ出向くわけですが。
やはり現地調査をしてみると図面や画像では判らない「障害物」が多々あります。
誰しもよく晴れた日に、水を入れ換えたばかりのプールを一人でのんびりと泳ぎたいと思うでしょうが。現実はそうも甘くありません。
大量の資材を持ち込んで力技でやってしまえば目標を達することは出来ますが、「引き算の美学」が必要になるタイプの現場です。
寝てて湧きあがったヒントをもとに、堅田部長に「親方、こんな方法、いつ考えているんですか?」と褒められながら(笑)
宏くんも含めて、曳家岡本3名で集合できる現場が決まることを願っています。

ps
先日、四国八十八か所の第三十二番札所である高知県南国市にある「峰寺」にお詣りに行って来ました。
こちらは、42年前に先代が太子堂の曳家工事をご依頼いただいたお寺さんでした。
当時、しぶしぶ家業の手伝いを始めたばかりの頃の自分も坊主として参加させて頂いたのですが、太子堂の曳家よりも、安定感の無い狛犬の曳家を親父がスルスルとあっいう間に終わらせてしまったことがずっと記憶に残っていました。
何しろ、囲んでいた鉄骨を解体してしまうと、表面に付いていた苔もそのままで、まるで何十年も前からそこにあったように据え付けられたのです。
ところが・・今回、見てみると狛犬は見つからず、記憶している場所には、こちらの石塔がありました。
もしこれだとすると・・思っていたより難しい工事だったはずだよな。と思いつつ、まだまだ精進しなくてはと悔しく思いました。

帰り道に、参道を犬の散歩をされていたお寺さんの関係者だろう女性に、「ここで40年前に(東芝)日曜劇場のロケで菅原文太さんや乙羽信子さんが来られていたのをご存じですか?」と尋ねてみました。
女性は憶えていらしゃいましたが、自分らの工事そのものは忘れてました。
でもねー石塔の苔もそうですが、「まるではじめからそこにあったように思っていただく」ことが、曳家の醍醐味ですから、忘れられていて満足です(笑)
でも、あの夏の日、撮影中に作業を止めてくれ。と言われて、階段下の駐車場の木陰で待機していた我々と降りてきた菅原文太さんと視線が合ったことは忘れられない思い出です。


子どもたちが大学卒業をしたら、家賃の高い都内のマンションを引き払って、千葉県いすみ市に移住しようと思っているんですが。
コロナ禍で色々なことが先行き不透明になりました。
弊社のごとき小さな曳家には出来ることは限られています。
でも「親方」としてもう少し頑張ります。

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能登半島地震で住宅被害に遭われた方へ

以下、実務者の立場から書かせていただきます。

  1. 液状化による地盤沈下を直す「沈下修正工事」と地震の横揺れで歪んだ建物を直す「家起こし(軸組補正工事)」は別ものです。

    水平を直すのみの工事と、垂直を直す、もしくは水平を直しながら併せ技で垂直も直してゆく工事です。

    おそらくは新潟県は沈下修正工事のみで可能です。石川県では家起こし、および座屈した柱の取り換えなども必要になると思います。

  2. 工事の着工時期についてですが。皆さま1日も早い修復を望まれていらっしゃいると存じます。しかし、地盤が充分な固さに戻るまでは施工出来ません。

    余震がこのまま収まったとして、おそらくは最低3月頭くらいまでは着工するべきではありません。

  3. にわか業者、悪質ブローカーにご注意ください。

    普段、ご縁が無い業種ですから唯一、判断できる金額のみで選ばれることもあるかとあります。

    家は安心して眠れる場所でなくてはなりません。

    歴史を背負っていない利益だけを考えている方と誠実な工事をされている業者を一緒にしないようしてください。