2021年6月3日 6:39

曳家と大工が行う理想の根継ぎ


夏はそうめんです。
そうめん「揖保乃糸」、「鮎の友釣り発祥の地」でもある兵庫県宍粟市波賀町で、

古民家の沈下修正+根継ぎ工事をしておりました。

古民家修復工事に於いて、曳家は大工さんや、建築士さんの下職です。
「下職」と云う言葉を嫌う方もいらっしゃいますが、自分は結構、好きなんです。
裏方の美学と云うか、主役である大工さんが、施工し易い環境を出来るだけ作ることで、安心して良い根継ぎをしていただけることが裏方のプライドです(笑)

足元が湿気のために、根腐りして沈下した柱を根継ぎするために。持ち揚げます。
柱を中心に四方の畳を各1枚づつ剝がした状態を作ってもらいます。
実際には、足元を拡く組んだ方が「揺れずに」「きれいに反力が獲れて」揚げることが出来ます。
しかし復旧と資材の運搬コストなどを考慮して今回はここまでです。

この鋼材の間に大工さんに入り込んでもらって金輪継ぎをして頂きます。

                       大工さんだけで施工しようとすると、こうした枕木を持っていませんから、どうしてもサッポード(3寸の角材)等であちこちを突いて持ち揚げることになります。

そうすると「転倒のアスペクト比」で考えると、高さに対して4倍の長さまでしか安定しませんから。つまり2mの高さの位置のものを突き揚げたいのなら、実際は最低でも50cmの長さの枕木を組み上げなくてはなりません。
※実際には上にものがある場合のアスペクト限界はこの限りではありませんが、ものとして倒れ辛いというだけであって、安全ではありません。
多くの工務店経営者が、大工さんや建物の安全を考慮して曳家の技術を取り入れてくれたなら良いなーと思います。
曳家岡本では、実際には、組み上げる高さの2分の1の長さの枕木で組み上げるようにしています。
これは設置圧や揺れを考慮した際のマージンとしては確保しておきたいものです。


今回の作業でぜひ注目して頂きたいのは、この画面の中央部分にセットされた単独のジャーナルジャッキです。
柱が存在しない部位なのに、なぜ?ここにジャッキを掛けているのか?ヘタクソですが、イラストを描いてみましたので見てください。


この揚げたい柱を専用金具で掴むだけでも2トン持てる計算にはなるのですが、
マージンを採っておきたい自分としては、大黒柱の位置に注目してください。

そう。この大黒柱とえびす柱の位置のずれに注目です。
この大黒柱から右方向に、もしかすると以前は柱があったのでは無いか?
そうでなくとも、赤星印の部分には荷重が掛かっていると判断して、上の画像のように根継ぎする柱から90cmの間隔しかありませんが、ここを応援揚げすることにしました。
これは結果として大正解でした。

根継ぎした柱は、着色せずに、「ここまでして遺した」と見せる場合もありますが、
今回は部屋の中央ですので補修の跡が目立つのもどうかと考えて、古色を付けました。

広島棟梁がアンバ粉の茶色とベンガラと墨を混ぜた塗料を作ってくださいました。

畳敷いてミッション終了です。

ちなみに、今回は弊社の所有する850kg積載のトラック2台(往復しました)に積み込める量の工具、資材で全てを賄う。というやりくり算段がありまして、
予定外が起こる可能性の多い仕事ゆえ、なんどもなんども積み込み前には拾い出ししてました。
それでも、姫路市に着いて、いよいよ明日から実作業を始めるという前日は、夜中の2時半くらいから眠れなくなって。
当日は無事に組み上げましたが、翌日のジャッキアップを考えると2日目の夜も3時くらいから眠れなくて・・
ジャッキアップが終わった3日目の夜に、なんとかゆっくり眠れました。
なんでも余裕を持って~と云うは簡単ですが、限られた予算、日数の中で最高の結果を出さなくてはプロとは言えないですから。
なかなかたいへんです。


「転倒のアスペクト比」という言葉は今回、帰路で立ち寄らせていただいた香川県丸亀市在住ながら全国展開をされている建築士、株式会社齊藤正轂工房 – Tadashi Saito + Atelier NAVE (koshiki.net)である齊藤 正先生にご教授いただきました。
齊藤先生ありがとうございました!


今回の現場は、お施主さんから山形県の曳家「我妻組」さん曳家工事・沈下修正 我妻組 – 建物移動 曳家・沈下修正のプロフェッショナル (wagatsumagumi.jp)にお問い合わせあったものを弊社が近くだからと、ご紹介いただきました。
我妻さまありがとうございました。

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