土佐派の曳家の「柱の掴み」嵩揚げ工法
今回は、土佐派の曳家ならではの社寺、古民家等の石場建ての建築物を嵩揚げ、曳家する際の「柱の掴み方」の特徴を解説させていただきます。
ほとんどの同業者は、柱を掴む場合、柱の片側に鋼材(H鋼で、あったりレールであったりします)を通して縛りつけます。
こんな感じです。
一方、土佐派の曳家は柱に直接、鋼材を縛りつけることなく、柱の左右に鋼材を通して、その上に枕木を渡したものの上に「添え柱」」を取り付けます。
もっとも、かつての土佐派の曳家は、添え柱を取り付けるために専用の金具など使うこともなく、渡した枕木の上に置いた添え柱にボルトを貫通させて掴んでいました。
石場建ての柱を持ち揚げる為に、全ての柱に2か所づつ穴を開けていたということです。
こうした細工をされている方は、令和3年の現代に於いてもいらっしゃいますが、正しくは「後で埋め木するから大丈夫」と言ったとしても、柱に対する欠損はもっとも避けるべきことですから。
強度や耐久性をまじめに考慮するならば、そうした施工は避けるべきです。
しかし現実には、それを実現するためには柱を掴むための金具や鉄板を大量に制作、保有しなくてはなりませんから、専業でやっていないとなかなか難しい部分はあります。
ワイヤー締めをされる方もいらっしゃいますが、それは毎日、締め直さないと緩んできますし、時間もかかりますのでたいへんです。
片側だけに鋼材を通した場合の真上から見た図です。
実際の建築物では、この図のように均等に柱が並んでいるわけではありませんので、どう鋼材を通すか?色々と細工のやりがいがあるわけです。
土佐派の曳家の1本の柱の両側に幅を採って鋼材を通す。という技術の場合、「片持ち」にしない。という強い思想があります。
これまた、片側のみに鋼材を通す工法に比べると輸送する資材が増えますから、コストが嵩みます。
それでも弊社のような零細曳家は、他社様とは違う努力をしなければ、お声かけいただけませんのでこれしかありません。
さて、この両側にH鋼を通す。施工方法の最大のメリットは、最後の据え付けの際に発揮されます。
両側に組んだ鋼材から反力を獲って、真横に突くことの出来るジャーナルジャッキを使うことでX軸、Y軸を合わせてゆくことが出来ます。
手順としては、土台を敷く前に建物の4隅の柱の立てりをレーザーポインターや下げ振りを使って合わせておきます。
その後、全ての柱の梁もしくはなるだけ上部から下げ振りを降ろしてもらって、ホゾ穴の墨付けをしていただきます。
柱は鋼材の上を渡している枕木の上を自在に滑らせて動かせることが出来ますので、舐めた素人がやるような「1本くらい大丈夫」と負荷を抜くようなことはありません。
場合によっては1本の柱に5トン近い荷重が掛かっている場合もあります。
自分はそんな勇気にある行動は出来ません。
※
もちろんこの工法には大量の資材を必要とする、以外にも、柱を縛りつけていないので曳家工事中に柱が動く。というデメリットも含まれています。
それでも自分なりに42年、曳家工事に携わってきてみて、この工法の方が「家を傷めない」と考えています。
ps
少し前に、山門の曳家工事の打診を頂きましたが、金額で負けました。
実は30代のころから、山門の曳家工事を依頼されたら、こう補強して並みいる建築士の方々に「こう来たか!」と云う施工方法を考えていました。
とりあえず悔しいんで堅田部長には自分の組み方のアイデアを伝えておきました。
彼がいつか実現してくれることを夢見てます。
ps2
韓国ドラマ『梨泰院クラス』が日本でリメイクされると話題になってますが。
主演のパク・セロイ役は竹内涼真で内定しているそうです。
次女と、じゃあスア役は齋藤飛鳥?チョ・イソ役は平手友梨奈?などとLINEしました。
ほとんど逢うことも無く逢っても何を話しても良いか?困る次女と、LINE出来て嬉しかったです。
サンキュー『梨泰院クラス』!
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