2022年2月4日 19:22

千葉県茂原市「藻原寺」さんの社の土台取り換え工事中です。

今回の施工内容は、反則技ですので、若い曳家さんや大工さんが参考にしていただくのは良いですが。
あまりお薦め出来るものではありません。
弊社の場合は、バックアップを獲れるくらいの資材も工具も豊富にある。ということもあります。

さてさて、本題です。

一級建築士育成指導プログラム「教育的ウラ指導」「合格ロケット」の主宰、(株)イエサブユナイテッドの荘司和樹さんから。
お父様の建設会社さんが管理をお手伝いさせていただいている千葉県茂原市の市役所前にあるものすごく大きなお寺、「藻原寺」さんの。
裏山にある「社(やしろ)」の土台や柱脚が傷んでいるんで取り換えたい。というお話をいただきました。

荘司さんに、「父や千葉県建築士会の仲間に曳家岡本の技術を見てもらいたい」というありがたいお気持ちをいただいてのお仕事です。

で・・普通、土台を取り換える為の嵩揚げと云うと、柱を掴んで持ち揚げるわけですが。
今回は、解体して柱を出している部分が腐食により、ボロボロです。
魔法は使えませんから、ボロボロの柱を掴んで持ち揚げることは出来ません。
出来ませんけど、「やって欲しい」です。


まず初めに考えたのは、足固めを土台代わりにして持ち揚げる。ということでした。
これは、床下の深いお寺などの柱を持ち揚げる際に、足固めを抜いておいて、その穴に鉄板を入れてブリッジで持ち揚げる技です。




※昔から大工の世界では、実際の荷重の3倍の大きさのもので造作する。という考えがあって、この3つ割程度の足固めも、この3寸柱の荷重を受けるには合格していると考えて良いということです。

そうなんですが、それだけではこれだけ傷んでいる柱ですから、潰れる心配もあります。
なので、柱に掛る荷重を減らすために、建物の外周に枕木を組み上げて、その上に鋼材を渡して、梁を突くことにしました。


これが脇障子(袖壁)を回避しなくてはならないのと、斗供(向拝柱の下の桁のあたり)との高さを合わせなくてはジャッキを掛けられません。

そんなわけで、多くの方は、サッポードでなんとか凌ぐわけですが、サッポードの不安定感はこうした工事に携わったことのある方なら誰でもご存じの通りです。

辛いことはしたくない。でも、やっておいた方が、後から入る左官さんや大工さんが、少しでも安全に作業できるような環境を作っておくことが人としての礼儀です。

荘司建設 荘司さんのお父様は、初め見積もりを見て「いや、ちょっと高いな。と思ったんで、岡本さんからの見積もりをそのまま出したよ(笑)」と仰られましたが、
今もそう思うかなー(笑)

この投稿を見て、世の中の何人かの社寺、古民家修復に携わる方が「曳家岡本と相判してみたいな」と思ってくれたら嬉しいなー。


そう思っていただく為に、片道200mの坂道を人力で約4トン運びました。
自分はほんの少しですが、堅田さんと、宏くんは、足パンパンです。

ps
何年も前に廃業された曳家さんから、枕木を貰って欲しい。とご連絡いただきました。
これで1m20cmの長さのアピトン、パウキジャン(どちらもハードウッドです)だけでも3700本保有していることになります。全部入れると4500本くらいあります。
地方の曳家としてはかなりの規模となります。
この保有資材があるから不安なくできるお仕事がいただけますように(笑)

ps2
生きていると、車が壊れたり、病気になったり色々なことがあります。
高知県宿毛市の現場が終わってから、幾つかありました。
ブログの方も書いてましたが、力の入っていない内容だったと思います。
今回から復活します!よろしくお願いいたします。

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4件のコメント

  • 野口 より:

    岡本さん、揚げ工事ご苦労様です。現場に対する熱き想い・技術力・人間力見習っていきます。
    まだまだ寒いですが、頑張っていきましょー!

  • 荘司和樹 より:

    岡本さん,魔法のような問題解決力をありがとうございました.何度もみかえしてみてその凄さに感動しております.

    • 曳家岡本 より:

      荘司さん
      ありがたいです。
      本当に、こうしたことも出来る。ということを、多くの建築士さんに知っていただければ幸いです。

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能登半島地震で住宅被害に遭われた方へ

以下、実務者の立場から書かせていただきます。

  1. 液状化による地盤沈下を直す「沈下修正工事」と地震の横揺れで歪んだ建物を直す「家起こし(軸組補正工事)」は別ものです。

    水平を直すのみの工事と、垂直を直す、もしくは水平を直しながら併せ技で垂直も直してゆく工事です。

    おそらくは新潟県は沈下修正工事のみで可能です。石川県では家起こし、および座屈した柱の取り換えなども必要になると思います。

  2. 工事の着工時期についてですが。皆さま1日も早い修復を望まれていらっしゃいると存じます。しかし、地盤が充分な固さに戻るまでは施工出来ません。

    余震がこのまま収まったとして、おそらくは最低3月頭くらいまでは着工するべきではありません。

  3. にわか業者、悪質ブローカーにご注意ください。

    普段、ご縁が無い業種ですから唯一、判断できる金額のみで選ばれることもあるかとあります。

    家は安心して眠れる場所でなくてはなりません。

    歴史を背負っていない利益だけを考えている方と誠実な工事をされている業者を一緒にしないようしてください。