2022年3月16日 6:39

「揺れる想い」小建築物の高所での曳家工事

今回の現場(高知県宿毛市)では、ホッとする瞬間には、ZARDの「揺れる想い」がリピートされてしまいます。
とにかく建物が小さい、しかも高く持ち揚げる+剛性。なので「揺れます」。

GLから、4m持ち揚げて曳家するわけですから、枕木の間に、コンディションの悪い枕木を選んで差し込んでおいて階段にしているんですが。
この昇り降りだけでも、足に来ます。

それ以上に緊張するのは、クドいですが、建物が小さいですから、4隅にジャッキを掛けて持ち揚げてますが。
ジャッキの僅かな上がりの違いで、4点のうち1点が遊んでしまっている場合があります。

揺れないように、鉄骨を上下2段に組み入れるためのジャッキの位置を変えてを繰り返します。
そのうえで、枕木と鉄骨を組んでゆきます。
時々、ジャッキの位置を変えた為に、荷重が抜けている枕木に手をかけてしまう心配がありますので、常にお互いを見張って注意し合います。


右側の宏くんへの矢印マークの廻りに見えているのが、今回の据え付け位置です。

いよいよ、据え付けですので、またジャッキの位置を細かく変えながら、鉄骨を抜いてゆきます。


さて?この状況下でどうやって鉄骨を抜き切るのか?
答えは、こちらの写真です。


4隅に、同じサイズの鋼材を取り付けて、そこにジャッキを掛けました!
曳家職人って、仕事を請ける際にはどう据え付ける?までデザイン出来ています。

据え付けました!本当に最期の最期まで揺れて緊張を強いられました。
でも、ぴったりとは行きません。
ここが、まだずれてます。


ハッ!ぴったり~。
反対側も!

これ、どうやって合わせたか?と云うと・・

レバーブロックを使って、「かやし」との合わせ技で動かしました。
時間にして2時間くらいです。
堅田部長が前日から「据え付けは、自分の考えがありますから、任せてください」と言ってくれました。

土佐派の曳家は、全ての工具が手運び出来ます。
1mあたり6kgの軽いレールも特徴です。今回のような現場だと、高く揚げますから、荷重バランスが悪い(外からは見えてませんが、内部に設置された機材の関係です)建築物の場合は、コロ曳きだと、コロが予想外の動きをすることがあります。
小さなレールが、安定感を発揮します。

ここからは、映画で云えばエンディングの撮影風景とかを見てもらう感じです。

話は1週間前に戻ります。
今回、現場に戻って来て、始めにしたのは、まず下段の鉄骨を新しく出来た基礎まで延伸しました。
これで安定感がグッと増します。何事も土台からです。

↑基礎を打ち換えるために下向けの矢印のところまでで、鉄骨の土台を止めていたのを、新しい基礎側まで繋いで伸ばすことで安定感を増すようにします。
周りの電柱やフェンスとの関係で、建物を持ち揚げる為に取り付けた鉄骨を拡く組めてません。
限られた条件下でどれだけ安定感を追求するか?が曳家の肝です。

夕方、仕事終わりには、必ず枕木を組んで、その上に仮設置して帰ります。
これは曳家の基本です。


こちらのダムの関連施設でした。
このダムのそばの駐車場に資材を集めて、最期は大型トラックで一気に撤退です。
上に電線とかが無いのでユニック車も操作しやすいです。

ps
現場からホテルへ帰る車の中では、ボロボロに疲れた身体で、娘たちのことを思いながら、THE MODSの「バラッドをお前」にリピートされます。

お前の嫌いな仕事している。

お願いだbaby そばにきて笑って、その顔を見たくて

俺はボロボロになる。

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能登半島地震で住宅被害に遭われた方へ

以下、実務者の立場から書かせていただきます。

  1. 液状化による地盤沈下を直す「沈下修正工事」と地震の横揺れで歪んだ建物を直す「家起こし(軸組補正工事)」は別ものです。

    水平を直すのみの工事と、垂直を直す、もしくは水平を直しながら併せ技で垂直も直してゆく工事です。

    おそらくは新潟県は沈下修正工事のみで可能です。石川県では家起こし、および座屈した柱の取り換えなども必要になると思います。

  2. 工事の着工時期についてですが。皆さま1日も早い修復を望まれていらっしゃいると存じます。しかし、地盤が充分な固さに戻るまでは施工出来ません。

    余震がこのまま収まったとして、おそらくは最低3月頭くらいまでは着工するべきではありません。

  3. にわか業者、悪質ブローカーにご注意ください。

    普段、ご縁が無い業種ですから唯一、判断できる金額のみで選ばれることもあるかとあります。

    家は安心して眠れる場所でなくてはなりません。

    歴史を背負っていない利益だけを考えている方と誠実な工事をされている業者を一緒にしないようしてください。