2024年2月1日 6:03

都会で曳家「据え付け目前」と能登半島地震の住宅修復のこと。


少しづつ角度を換えながら新しい基礎上まで曳家してまいりました。
まだ、この高さだと「蛇人間」宏くんもスイスイと床下を移動できます。


ガイドで土台と基礎の位置を照らし合わせて微調整してゆきます。



位置が決まりましたら、全ての柱に直接、ジャッキを掛けてH鋼を抜けるようにします。

いよいよ「上腰工法」への変換です。
上腰工法とは敷居より上で柱を掴んで持ち揚げる曳家の技術の一つです。
鋼材を貫通させるために柱廻りの壁を抜かなくてはなりませんが、その代わりに基礎は新築と同じものを造れます。
曳家をすると、どうしても鋼材を抜くための開口を基礎に造るのが多いですが。
基礎立ち上がりを「基礎梁」と考えるなら、梁にあちこち穴を開けて「後から埋め木するから良いだろう」というのは良い工事ではありません。
しかし「構造から直す本気の住宅再生」(創樹社)の巻末対談で伊礼智先生に告げてありますが。
我々が主導するとどうしても「耐震性」や「強度」のことばかり優先してしまいます。
やはり建築士さんがお施主さんの生活スタイルをきちんと聞き取りしてくださり、何を優先するか?選んでいただくことが重要です。



ここまで土台下にあったH鋼を敷居上に組みなおして行きます。
堅田さんと宏くんが「今日はここまで」と自分たちでノルマを決めて終わるまで帰らない。と強いハートで作業してくれます。

親方である自分は、疲れてくると右手首の力がすこぶる落ちてくるので、細工仕事を担当させてもらってます。


ジャッキダウンするために、枕木の中心に伸ばした状態のジャーナルジャッキをセットしてゆくんですが。
両側に仮受けした低床型ジャッキの真下(2枚目のジャーナルジャッキのギア右手)を見ていただくと不自然に枕木の間に、12cm程度の空間があることに気づかれると思います。
これは本来、ここに少し前までは枕木が通っていたことの証明です。
曳家は大工さんと違って「ばらしておいて組み直そう」が出来ない職業です。
どんな時でも、辛抱強く何度もジャッキを移動させながら、少しづつジャッキダウンを始められる状態に持ってゆきます。

上腰工法に変換しましたら、床下での木工事も楽に出来るようなります。

今回も200台近い大小取り交ぜたジャッキを惜しみなく使ってます。
もうすぐ据え付けです。


※帰り道 信号待ちにて。

能登半島地震の被災住宅からのお問い合わせが続いてます。
お問い合わせ頂きましたら、症状、築年数等を伺って理想の沈下修正工法をアドバイスさせてもらってます。
必ずしも弊社にご依頼ください。というわけではありません。
これは平時でも、仕事が薄い時でも変わらない姿勢です。

それでも、「地震保険に加入はしていたけど保険の審査で35万円しか降りませんでした。とてもではないですが、アンダーピニング工法を選ぶ余裕はありません。」と土台揚げ沈下修正工法を選んで、弊社にご相談くださる方もいます。

「曳家岡本」は1班体制の小さな会社です。
もし今、ご連絡いただいているお家とお寺1棟(新潟10棟、富山2棟、石川2棟)が全て決まればそれだけで1年が必要となります。
もちろん全てご依頼いただけるはずもないでしょうし。
「そんなに待てない」という方もいらっしゃると思います。

自分たちに出来るのは、ご依頼いただきました建物を1棟1棟を丁寧に誠実に直してゆくのみです。

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3件のコメント

  • 宮木薫 より:

    このたび、能登半島地震で実家が被災しました。室内、玄関など開け閉めがきついです。築60年経過してますが、ひとり暮らしの母が何とか修理して住めないものかと考えていますが、私自身判断がつかない状態です。岡本さんの動画をみてきめました。よろしくお願いいたします。携帯電話は09028396021です。

  • 麻多弘志 より:

    このたび、能登震災で家が傾き、雨戸など六割方、戸の開け閉めがキツイです、罹災証明は大規模半壊です、81歳の親一人で何とか生活できています、母親はこの家に住みたい強い願望あり、80坪位、犬走、多数亀裂あり、岡本さんの記事、動画拝見致しました 専門家に見てもらい どれくらいの費用が掛かるのか、治す価値あるのか、是非、診断して頂きたいです、瓦はまだが直していない、基礎が大丈夫でないので、雨漏りブルーシートで覆ってあります。09080940788

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能登半島地震で住宅被害に遭われた方へ

以下、実務者の立場から書かせていただきます。

  1. 液状化による地盤沈下を直す「沈下修正工事」と地震の横揺れで歪んだ建物を直す「家起こし(軸組補正工事)」は別ものです。

    水平を直すのみの工事と、垂直を直す、もしくは水平を直しながら併せ技で垂直も直してゆく工事です。

    おそらくは新潟県は沈下修正工事のみで可能です。石川県では家起こし、および座屈した柱の取り換えなども必要になると思います。

  2. 工事の着工時期についてですが。皆さま1日も早い修復を望まれていらっしゃいると存じます。しかし、地盤が充分な固さに戻るまでは施工出来ません。

    余震がこのまま収まったとして、おそらくは最低3月頭くらいまでは着工するべきではありません。

  3. にわか業者、悪質ブローカーにご注意ください。

    普段、ご縁が無い業種ですから唯一、判断できる金額のみで選ばれることもあるかとあります。

    家は安心して眠れる場所でなくてはなりません。

    歴史を背負っていない利益だけを考えている方と誠実な工事をされている業者を一緒にしないようしてください。