2022年7月4日 18:20

「三体の家」工事中止!「正直不動産」に負けない「正直曳家」!

近年では、中古住宅を購入する際には「インスペクション調査」つまり第三者視点で住宅診断をしてもらってから購入することが、
浸透してきました。
つい最近、NHKテレビドラマ「正直不動産」でもインスペクター(住宅診断士)が登場されるエピソードがあったので。
「へえーそんな職業があるんだ」と初めて知った方もいらっしゃると思います。

さて、私ども「曳家岡本」が、断続的に沈下修正工事を施工させていただいておりました、世田谷「三体の家」。
こちらも購入前に住宅診断を受けていたのですが、施工する中で度重なる瑕疵の発見が続いて、
それゆえお施主さんが「このまま追加費用を出して工事を続行するか?解体してしまってすっきり新築に建て替えるべきか?」何度も悩まれて、それゆえ弊社も工事を中断してご判断をお待ちしておりました。


結果は、解体となりました。
駐車場上の梁が白蟻被害を受けていたことが最終的な判断を下されました。


↑ここはよく見れば入り隅の部分の苔がうっすらと見えていましたから、雨水の侵入による腐食を疑っても良かったのかも知れません。
しかし・・この部分は図面上および売り主の説明によると「鉄骨」です。ということでしたので。
自分は、逆に「結露」の心配をお施主さん(買い主)には伝えてました。

木と鉄は相性が悪く、気温の寒暖で鉄部に起こる結露(汗をかくと言います)によって、木が傷められます。
よく社寺や古民家などの説明をする際に「この建物は1本の釘も使ってないですよ」と云うのは大工技術の凄さを語るだけでなく、金具を使っていないことにより結露を防ぎ耐久性を確保していることを説明しているわけです。
昭和の時代の日本の住宅は、35年ローンで消耗品として終わることを前提としていましたから、あまり耐久性など考慮していませんでした。


こちらのお家は、床下に一切の通気を獲っていないこと。

外周も胴縁を付けずに、柱にそのまま構造用合板を貼り付ける細工など、今ではちょっと考えられない仕様で建ててました。

また解体前に床上(FL)で計測させていただいた沈下量と、解体してから土台天で計測したものでは。
最大沈下部分で55mmが86mmと、31mmの誤差がありました。
このことから、このお家は建築中に既に圧密沈下が始まって、それを気づいてか?気づかずか?
基礎下を土で埋めて、大理石の床を貼って床レベルを合わせていたのだと推測します。

不勉強な建築人の場合は、新築時のイメージしか頭に無い方もいます。
建物は、建てた瞬間から古くなってゆきます。
その建物が、10年後、20年後はどうなっているのか?を考えて設計・施工できる知識と技量のある建築士、工務店に依頼しなくては安心して住むことは出来ません。

堅田さん、宏くんが苦労して取り付けていました「伸ばしナット」も粛々と外して行きます。

ホールダウンも。

曳家職人としては後2日でジャッキアップが始まるところまで進んでいての中止ですので忸怩たる思いですが。
お施主さんの「この家に対する信頼性が無くなりましたので」という言葉が全てでした。

インスペクション調査では、入れない、見れない。部分は「調査不可能」と正直に書くまでです。
逆に自分などは無資格者ゆえの立場ゆえ、「損傷の可能性」の話を軽々しく言えます。
どちらがどう良いか?はケースバイケースでしょうし、建築士さんが介在してくださってご指示くださると良いものになります。


「週刊漫画times」連載中の「解体屋ゲン」7月1日発売号と来週8日発売号に曳家岡本チームがゲスト出演させていただいてます。
1年ぶりの登場の岡本親方は、コロナ失業が堪えたのか?白髪の目立ついぶし銀の職人のようです。
そして、堅田工務部長の頼もしい成長ぶりが、職人の世代交代を感じさせます。
こんなに酷暑なのに・・岡本親方の心は寂しく秋風なんだろうな。(あくまで漫画のキャラクター。本人はやや別ものですから)

実在の岡本親方は、ビリーアイリッシュの有明アリーナ公演の先行予約を申し込んだりして、まだまだ「魂は老けない」ぜよ(笑)

ps
待機中は、家内からずっと連れて行ってくれ。と言われていた日光東照宮参拝に行きました。

翌日は、栃木県のトップ建築士事務所(なんと建築士さん15名も在籍!しかも誰でも知っている複数のNBチェーン店舗を全国区で設計監理されています!!)「酒井建築設計事務所」ホーム | 株式会社 酒井建築設計事務所 ARC-SAKAI | 公式サイト (arcsakai.com)、酒井社長LOVELOVEご夫婦とお食事。

翌々日は、栃木県の曳家さん五月女建設株式会社|曳家工事 (soutome.biz)に表敬訪問。
自分の本も読んでくださってたそうで感謝です。サッカー選手のようにTシャツの交換。
栃木県は道路拡幅工事が今も続いていてそれゆえ地元だけで曳家を続けられている。というお話に驚きました。
2年前に新社長に就任された五月女JAZZドラマーモトシ社長。
熱心だし、仕事があるから、技術も進化させられています。
素晴らしい頑張ってください!JAZZも(笑)

ps
自分も「正直不動産」に負けない「正直曳家」ですので・・
お気軽にお問い合わせくださいね。
hikiyaokamoto@gmail.com

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4件のコメント

  • 本多守 より:

    JMRAに所属してます。はじめまして。
    インスペクション調査は無駄だったということですね。有償で調査してこんなことになるなんて。。。ひどいですね!床下に一切の通気をとっていないもあり得ません。インスペクション調査をした会社が知りたいぐらいです。お疲れさまでした!「正直曳家」に拍手!!

    • hikiyao より:

      本多さま
      コメントありがとうございます。
      そこは、難しい判断ですよね。破壊検査をしなければ、これらは判明しなかったわけですものね。
      ただ、これ設計図面と違う施工をしていたんですから、図面も信用できないというのはなかなか難ありですよね。

  • 青柳空泉 より:

    頑張ってください
    当方は、木造専門の設計監理を45年経営しています、
    「千年建築」の社寺、茶室が50棟あります。
    いつかご縁がありますように、
    FBいくつか管理しています。
    南無阿弥陀仏

    • hikiyao より:

      青柳様
      ありがとうございます。
      自分の技量で足りる現場であれば喜んで参加させてください。
      頑張ります。

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能登半島地震で住宅被害に遭われた方へ

以下、実務者の立場から書かせていただきます。

  1. 液状化による地盤沈下を直す「沈下修正工事」と地震の横揺れで歪んだ建物を直す「家起こし(軸組補正工事)」は別ものです。

    水平を直すのみの工事と、垂直を直す、もしくは水平を直しながら併せ技で垂直も直してゆく工事です。

    おそらくは新潟県は沈下修正工事のみで可能です。石川県では家起こし、および座屈した柱の取り換えなども必要になると思います。

  2. 工事の着工時期についてですが。皆さま1日も早い修復を望まれていらっしゃいると存じます。しかし、地盤が充分な固さに戻るまでは施工出来ません。

    余震がこのまま収まったとして、おそらくは最低3月頭くらいまでは着工するべきではありません。

  3. にわか業者、悪質ブローカーにご注意ください。

    普段、ご縁が無い業種ですから唯一、判断できる金額のみで選ばれることもあるかとあります。

    家は安心して眠れる場所でなくてはなりません。

    歴史を背負っていない利益だけを考えている方と誠実な工事をされている業者を一緒にしないようしてください。