2024年7月2日 17:19

能登半島地震の住宅修復:尽忠報国

「1/6母死ス」
と、外壁にスプレーで描かれたメッセージ。

現地調査にご招聘いただいて、車載ナビで目的地に向かってゆくのだが、あちこちで「通行止め」の看板に遮られ迂回してゆく中で見たスプレーでの殴り書き。
誰にも気持ちをぶつけることも出来ず、忸怩たる思いで母親の生きた証を廃屋になった自宅に描いたんだろうか?


橋を渉れとナビには言われるけど。
橋の両側は地盤沈下が起きていて、接続が出来ていないままです。

※参考画像 (七尾市だそうです。)

2か月ぶりに来させていただいた珠洲市は主要道路はかなり改善されて、以前よりはずっと楽に目的地に行けます。

驚くほどに「転覆」しているようにしか視えない家だったもの。
↓このような状態のお家はいくらでもあります。

沈下修正工事をすれば、まだ住むことの出来るお家もあります。
石川県の補助金の制度により「直して住めるなら直したい」というお考えの方もいます。

その一方で危険判定を受けた建物で「公費解体」の申請が受理されたものは順次、解体されています。



過去の地震を経てダメージが蓄積していた能登半島の住宅は、ホゾが抜け柱が斜めになっています。
液状化で沈下したお家と異なり、構造的に心配の無いものを求める気持ちは痛いほど感じます。お伺いさせていただいたお施主さんのお家のテーブルには拙著をはじめ、佐藤実先生の「楽しく分かる!木構造入門(改訂版)」まで積み上げられていました。

実は熊本地震の際にも強烈な揺れで建物の接合部が抜けかかっているお家をたくさん視たのですが。みなさん「水平になれば良い」とばかりに、人間で云えば関節が抜けかかっている危ない状態にも関わらず、そのままコーキングで隙間を潰したり、壁紙を貼り直す。という「見た目だけのリフォーム」をされることを選ぶ方が多くてたいへん悔しい思いをしました。

考えてみると、重い荷物を積んだ大型トラックが過去何十年もの間、通過して「毎日、転圧されてきた」国道やバイパスが地割れして崩れてゆくわけです。


※2枚は参考画像です。
(一人で運転しているんで撮影出来てません。この横田ICの辺りは本当に酷かったですが、現在はかなり改善されました。)

毎日、転圧されていた道路が地割れして陥没するわけですから、最早、一般住宅での地盤補強などはほぼ効力を期待する方が難しいと考えました。

新潟への帰路にサトウ工務店佐藤さんのところに寄らせて頂きました。
佐藤さんは、能登半島復興工事に参加する職人向けの仮設ホテルの設計をされているそうです。
願わくば各部屋に洗濯機が設置されるプランでありますように。
長い出張でコインランドリーの争奪戦になって何度も何度も部屋を出たり入ったりする疲弊感は出稼ぎ労働者でないと理解出来ないと思います。
毎日、洗濯したきれいな作業着で現場に伺えますよう、よろしくお願いいたします。

ホゾが抜けたお家を引き締めて直すのは曳家職人でなくては出来ません。
また古いお家の書院の部分を解体させていただいて構造的には本来あるべき柱を新設できるようするのも曳大工の仕事です。



来年は、いよいよ能登半島に伺えます。
自分の遺された現役時代に本当に少しだけですが、世の中の為になれたらと思います。

お気軽にご相談ください。
ご招聘いただければ全国伺います。
hikiyaokamoto@gmail.com

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能登半島地震で住宅被害に遭われた方へ

以下、実務者の立場から書かせていただきます。

  1. 液状化による地盤沈下を直す「沈下修正工事」と地震の横揺れで歪んだ建物を直す「家起こし(軸組補正工事)」は別ものです。

    水平を直すのみの工事と、垂直を直す、もしくは水平を直しながら併せ技で垂直も直してゆく工事です。

    おそらくは新潟県は沈下修正工事のみで可能です。石川県では家起こし、および座屈した柱の取り換えなども必要になると思います。

  2. 工事の着工時期についてですが。皆さま1日も早い修復を望まれていらっしゃいると存じます。しかし、地盤が充分な固さに戻るまでは施工出来ません。

    余震がこのまま収まったとして、おそらくは最低3月頭くらいまでは着工するべきではありません。

  3. にわか業者、悪質ブローカーにご注意ください。

    普段、ご縁が無い業種ですから唯一、判断できる金額のみで選ばれることもあるかとあります。

    家は安心して眠れる場所でなくてはなりません。

    歴史を背負っていない利益だけを考えている方と誠実な工事をされている業者を一緒にしないようしてください。