東大寺の隣地にある築200年の茶室の曳家・家起こしやります!
この土塀の向こう側は、東大寺の敷地で、もともとは「西塔」があった跡だそうです。
それぞれの土地柄に常識が違いますが、奈良京都に来ると「歴史」を預かるプレッシャーが自分に纏わりつきます。
実際には、いつもと変わらず一生懸命やるのみなんですが。それでもなんか違います。
今回は奈良県、東大寺の隣地にあります個人様所有の、築200年前後と推定される茶室の曳家+家起こし工事をご依頼いただきました。
この母屋も含める建物陣は、塔頭(もしくは塔中)と呼ばれるお寺の重職にあった方の小院のようなものだそうです。
茶室の曳家工事は、過去に2棟、経験がありますが。
今回は屋根の谷の切り離しや修復の手間も含めると、総工事費は普通に住宅が1棟建てられるくらい掛かります。
自分も今回の工事の勉強のために茶室の相場を調べてみたんですが、
数寄屋大工による、本物の茶室の新築工事は1000万円~2000万円もかかるのが普通のようです。
奈良県は京都と異なり「大和造り」と云って大きな構造材が使われているので、私どものような仕事をさせて頂くものとしては「重いけど、やり易い」造りが多いと感じてます。
しかし・・先代(父)が、まだ現役の頃によく言ってましたが。
「直也。茶室は上品に見せるために大きな柱は使うて無いき。折らんよう気をつけないかんぞ」
そんなわけで軽くて細いから、簡単だーでは無くて、難しいです。
特に今回は、茅葺きで頭が重いですから、下手に頭を引っ張ると倒壊するリスクが高いです。
そこで昨年の徳島県での豪商のお家の古民家家起こし工事と同様に、梁を突いておいて足元を押して「立ち」を直す方法で軸組補正工事を行うつもりです。
こうプランでやると、持参する枕木の量が飛躍的に増えてしまうのですが・・リスクは極力、排除してゆくのが自分のモットーですので仕方ありません。
とほほ。見積もり書いた時は受注したい気持ちが勝って、少なめの資材で対応するつもりの計算してましたので、この分は自動的に値引きです(笑)
でも法隆寺町での仕事のように、きっと色々な方が見てくださって「曳家岡本、堅い仕事するな」と思っていただくことが次への受注に繋がると信じてます。
ps
今回は、お施主様からテレビ、新聞等の取材を前向けにご検討いただけるご許可を頂いております。
いつもご相談いただいてもお施主さんの許可が取れなくてお互い残念でしたが。もし、今回のこの工事に関する取材申し込みご希望がありましたらご連絡ください。
ps2
今回、歴史の重さについて書きましたので余談ですが、皆さまに注意喚起として書き足しておきます。
東日本大地震での住宅復興を通じて「沈下修正工事」が世の中にやや浸透いたしました。
あまり歴史の無い職種ゆえ、まだまだ淘汰されなければならない「にわか業者」やお施主さんそのものに補助金詐欺の片棒を担がせようと打診している2業者の情報が自分の耳にも入って来ました。
これは熊本地震が東日本大震災の時の補助金200万円前後に比べて、600万円と非常に金額が大きいゆえに起こっている事態かも知れません。
自分は新規参入業者の営業を阻むつもりもありませんが、正しく技術を習得されてから、適価での工事をして欲しいです。
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