2020年10月25日 19:12

築200年の茶室の曳家+家起こしです。

奈良県の東大寺の隣地にある築200年の茶室の曳家工事。
今回はドローンで空撮画像!

画面右側のレールの下になる枕木の組み方が不揃いで美しくないのは、該当部分に井戸跡がありまして、それを遺すために、ぎりぎりの高さで曳くための苦肉の策です。

曳家するには、可能な範囲で低い位置で動かすことが望ましいです。
それは余分な資材を使わない。ということだけでなく、曳く為のワイヤーの角度をウインチと出来る限り同じ高さにすることを目的としています。
障害物が高い位置にある場合は、セットするウインチも高くしなくてはなりません。
低い位置にセットしてしまうと押し込んでしまいます。

今回は、手配した輸送車の積載量の都合で余分な資材が少ないですから、少し動かしては茶室を浮かせて、レールを進行方向にずらしては~を繰り返しました。

一旦、作業がし易いところまで曳き出しまして。
いよいよ今回の工事の白眉でもあります「家起こし」作業です。
頭が重いですから、大工さんの家起こしとは逆に、梁を突いて柱への負荷を減らした状態を作って、柱の足元を動かして柱の垂直を直して行きます。

化粧野地板?を遺していますので。
そのまま枕木を組み上げても梁を突くことは出来ません。
なので、もう1度、2枚前の画像を見てみてください。
組み上げた枕木の上にH鋼を横に入れて「跳ね木」のような細工で荷重を受けています。

これで柱にかかる負荷を減らしておいて足もとをジャッキで突いたり、レバーブロックで引き締めたりして動かして行きます。

↓柱を突く為の反力を獲れるように、H鋼を一段上に組み足しました。

これがジャッキの反対側からの画像です。

梁を突くための「跳ね木」のようにH鋼を横に入れたり、反力を獲るためにH鋼を取り付けたり、曳家職人はブリコラージュに優れていなくては良い職人と云えません。
自分はどのレベルか?と問われると困りますが。
やはり長く続けてきましたので、少しは引き出しは多いかも知れません(笑)

柱を動かした後は、仮筋交いで固めます。
本当は曳家する前に固めたかったんですが、母屋との切り離しのエキスパンションの問題とかで、引き出してからとなりました。



仮置きしてゆくために。
もう一度、レベル調整と仮筋交いを入れるために外していたジャッキの掛け直し。

軽い!と言いながらも、片側に沈下していたのをコンパネを詰めて微調整してます。

鴨居にジャッキを掛ける時には、埋め木を5mmほど出しておいて、鴨居に跡が付かないように細工してます。
枕木組み上げる際に、宏くんが当ててしまって、鬼二人に怒鳴られてました(泣)
預かった建物を最善な状態で再生できるよう心を砕いてます。

伝統構法を専門とする建築士の皆さまは、東大寺拝観とセットで視察に来てくださってました。


ps
何かありましたら、お気軽にお問合せください。
hikiyaokamoto@gmail.com

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能登半島地震で住宅被害に遭われた方へ

以下、実務者の立場から書かせていただきます。

  1. 液状化による地盤沈下を直す「沈下修正工事」と地震の横揺れで歪んだ建物を直す「家起こし(軸組補正工事)」は別ものです。

    水平を直すのみの工事と、垂直を直す、もしくは水平を直しながら併せ技で垂直も直してゆく工事です。

    おそらくは新潟県は沈下修正工事のみで可能です。石川県では家起こし、および座屈した柱の取り換えなども必要になると思います。

  2. 工事の着工時期についてですが。皆さま1日も早い修復を望まれていらっしゃいると存じます。しかし、地盤が充分な固さに戻るまでは施工出来ません。

    余震がこのまま収まったとして、おそらくは最低3月頭くらいまでは着工するべきではありません。

  3. にわか業者、悪質ブローカーにご注意ください。

    普段、ご縁が無い業種ですから唯一、判断できる金額のみで選ばれることもあるかとあります。

    家は安心して眠れる場所でなくてはなりません。

    歴史を背負っていない利益だけを考えている方と誠実な工事をされている業者を一緒にしないようしてください。