沈下量が120mmを越えるお家の土台揚げ沈下修正工事:推奨手順です。

渋いっ!渋すぎです!
沈下量の大きな範囲(120mmを越える部分)に仮据え付けするために、一部を省いて、旧式の建築ジャッキに取り換えました!
ここに至るまでの作業手順です。
基礎の立ち上がりを「基礎梁」と捉えますから、出来る限り、斫穴を小さくする努力をします。
なので、ブリッジの鉄板を使います。
基礎の斫り穴を小さくすることで、横筋を切らずに済む部位が増えます。
横筋が基礎天端に近く入っていた為に、切断しなくてはならなかった部分は、溶接します。
水平直りましたら、基礎修復をする前に、アンカーボルト、縦筋、横筋の再緊と継ぎ足しです。
その前に、オイルジャッキを使って揚げていただ部位を旧式の建築ジャッキに取り換えます。
これはオイルジャッキはオイル漏れを起こして、ジャッキが下がってしまうことが、ままあるため安全性、お家を傷めないようにの配慮からです。
建築ジャッキ(通称 きりん)は、形状からして「受けて置いておく」には安定性も高く信頼できます。
それでは、「初めから建築ジャッキで揚げれば良いのでは?」と考えるのは間違いです。
それしか無い時代に於いては建築ジャッキを使うしかありませんでしたが、今では建築ジャッキはジャッキ棒を横穴に入れて「巻く」ため、揺れる、倒す、滑るリスクがあるためジャッキアップの際に使うことはありえません。
なので、基礎修復工事や仮据え付けなどの場合を省いては活躍の場はありません。
今回、高知の倉庫から久しぶりに出てくれた建築ジャッキの皆さんは「俺たちもまだ役にたてるんだな」と喜んでくれたのを、ひしひしと感じました(笑)
こう云う時のために手入れしていて良かったです。
で、修復するとは云え、平屋部分などは出来る限りオリジナル基礎を傷めないように10mm~200mmの範囲で柱下から逃げられるところは逃げます。下手な人は水平に、直すことばかり優先して基礎を傷めない配慮が足らないです。
ですが、逃げてばかりだといくら「軽い」「現状で持てている」と云ってもジャッキを掛けた部位が僅かに張ってしまいます。
これを「柱」で荷重を受けるようにスペーサーを入れます。
しかし天端の幅が120mmですから、沈下量が120mmを越えたところも同様に、スペーサーを入れていては横揺れに対して脆弱になります。
それゆえ、曳家岡本では沈下量が120mmを越える範囲は、ハードウッドの芯材で柱を受けておいて、それをコンクリートで巻くようにしています。
もちろん小さな芯材だけでは作業中の強風や地震発生で揺れると危ないですから、
危険回避のために、を建築ジャッキと鉄板でサポートしておきます。
↑3枚目の写真の芯材が白っぽいのは、千葉から持参したウリンが足らなくなった為に、急遽、安芸市の山和木材さんに樫を挽いていただいて使用した為です。
正直、平屋部分ですから、檜でも良いでしょうが、弊社では土台を受ける木材は全てハードウッドを使う。と決めています。
なぜなら1mmを追いかけて施工しているのに、家の荷重で2mm程度潰れることもある材を使うのは哀しいからです。
ハードウッドと云えば、今回も120mm角を筆頭に90mm、60mm、30mmのイタウバ、サイプレス、フィエラ、ウリンを持ってきて、お家の重さを見ながらコンクリートで巻く時のことを考えて、可能な範囲で小口径のものを選んで使い分けています。
手前に見える小さくカットしたものは、切り間違いでは無く、一旦、据え付けてみたものの収まりが悪くて1mm~2mmを増減させた為の残骸です。
これを丁寧にやらないと建付けが悪くなります。
まあ、建付け調整費用は我々の手間より安価になりますから、安さを求めるなら「微調整は大工さん任せ」の施工業者に依頼されることもありかと思います。
アンカーボルト溶接中に、熱がボルトを伝わって壁の中の断熱材等が発火する事故がありますから、
宏くんが内側にいて、水スプレーやペットボトルに入れた水をかけながら作業します。
一番下の写真は水をかけて、水蒸気の煙が出ている場面です。実際にはすごい水蒸気が出ています。これは少し収まったところです。
※
火災のリスクを避ける為に、溶接をせずに、土台と基礎立ち上がりにボルトを貫通させて、外側から羽子板ボルトで緊結した。とする施工者もいます。やむを得ない場合もあると思いますが、実際にはそれでは地震時の横揺れに対する抑止はほとんど出来ません。
また土台や基礎に穴を開けるということは欠損を造っている。ということでもあります。
切断したアンカーボルトは、かつて「浦安復興相談室」が規定した13mmの異形鉄筋で両側から溶接して行きます。
堅田さんと宏くんが、溶接してくれている間に、自分は防蟻処理も追加でご依頼いただきましたので、ボラケアの塗布をしました。
「土台揚げ」の良さは抜けたホゾを引き締める等いろいろありますが。
お家を持ち揚げてますから、白蟻業者さんでは不可能な、土台下に防蟻剤を直接塗る。と云うこともあります。
ケトルでお湯を沸かして、レーザー温度計で、40℃になるのを待って希釈します。
今回はお家が大きいので、役割分担してます。岡本親方も床下に潜りまくりですよ!若杉社長(笑)
アンカーボルトを切断した部位はブロアと刷毛で埃りを飛ばします。
基礎修復時には、ペットボトルで水も掛けます。
その後は、沈下量が大きいので、大工さんに応援に来てもらって4人がかりで、型枠を組んでゆきます。
沈下量が少ない場合などは小手だけで完了する場合もありますが、この規模だと型枠を組むべきです。
今はパネコートが値上がりしてたいへんなので、倉庫の在庫をうまく使いまわします。
風窓の部分は丁寧に留めを打ちます。
こうして於いて、床下にコンクリートを運び込んで詰めてゆきます。
沈下量が少ない部分は、薬剤を入れて、垂れてこないように「紙ねんど」状態にして、詰めてゆくのですが。
これが固練りゆえ、手首にかなりの負担になります。
夕食時にマグカップを落してしまったり、風呂でひしゃくタイプの湯桶を右手首だけで支えられなくなったりします。
沈下量が大きな範囲は、堅田部長と宏くんが、苦労して仕上げてくれてます。
脱型です。
コンクリートが固まったら、揺れないように支えていたブリッジの鉄板を抜いて、次はその穴を埋めます。
基礎修復終わりましたら、床下を掃除してから、鋼製束を入れてゆきます。
今回、ホームセンターでの購入でなく、建材屋さんに注文したんですが。1本あたり200円高いのですが、なかなか良いです。
そして、床と畳を復旧して完了です!
今回は、約150台のジャッキを使用しました。
これは千葉の倉庫に持ち帰る分と、徳島県吉野川市に運んでおく分です。
年末には工具の手入れと、倉庫の大掃除が待ってます。
今回はお施主さんが、ブログやHPをよく見てくださった上でご依頼いただけましたゆえ、良い工事をさせていただけました。
どうしても地方の場合は、不勉強な工務店さんが安易に受注するために判り辛い施工品質で闘うことを放棄して、判り易く「安価」な下請け業者を求める傾向が強いです。
自分は安価な工事を否定するわけでは無いです。
実際、自分たちもアンダーピニング工法や薬液注入工法に比べれば「安価な工法」です。
ご相談いただけた場合にお施主さんにフェアに「選択肢」をお伝えできるよう正直に生きてゆきます。
※
土台揚げ工法は、沈下量の大きい場合は底板が斜めになったままゆえ、良くない。と言われますが。
曳家岡本による転倒のアスペクト比では、1000分の12までは、問題無いと考えています。
自転車で坂道を登るためにペダルを漕ぐ時のことを考えてください。
ある程度の勾配までは、比較的、楽に漕ぐことが出来ます。
しかし、ある一定の勾配になると、きつくなります。
お家の沈下もそうで、自分の体験から云うと1000分の15を越えると加速度的に沈下している側が重くなります。
こちらのお家は、最大沈下量241mmではありましたが、お家が床面積だけでも50坪程度あり、傾斜は1000分の6・3程度でしたので、土台揚げ工法で問題なく施工できると判断いたしました。
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2件のコメント
昨日のセミナーを受講させていただきました。具体的に分かりやすく、参考になりました。ありがとうございました。修理に向けて前向きに、一歩前へ進む事ができそうです。土台上げか、耐圧版工法で迷っています。
よくよく考えてみようと思います。
またアドバイス等いただけたら、幸いです。
お忙しいと思いますが、お仕事頑張ってください。
市川さま
ありがとうございます。
参考になって嬉しいです。